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12章…血統の価値
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しおりを挟む「和臣さんにはこんな人でなければ」としどろもどろに架空の女性をプレゼンすること数分。
説明が2週目に入ったところで彼は残っていたコーラをずびずび吸って下品にもゲップをかました。
「げェっぷ」
「~ッ、和臣さん、私は真剣に」
「よく分かったよ、ところで聖良、君が持っている資格・免許は何がある?言ってみろ」
唐突な質問に、私の頭に就職時の履歴書が過る。
「え…?」
「早く」
「えっと、運転免許と…」
「普通だけか?全部教えてくれ」
「…普通と大型、普通二種…こ、小型船舶」
まるで入社面接だ、普段披露することが無いものも一応伝えた。
「船舶?」
「何かお役に立てればと思って…調理師、あと民間の検定ですが秘書一級、アナウンス講師、硬筆毛筆書写は共に師範代です…英語と…漢字も…パソコンは文書処理と表計算と…ベビーシッター、児童教育アドバイザー、幼児食コーディネーター、」
なんだかんだ言いつつも公私共にサポートするつもりだった、彼が結婚すれば奥さまになる方とそこそこ仲良くなって産前産後のケアから託児まで任されようと準備をしていたのだ。
半分は趣味みたいなものだが、自分は設ける予定の無い赤子の世話の勉強だってやってみれば楽しかったし少しだけ憧れみたいなものも湧いた。
「そんな権利は無い」と自らねじ伏せてしまったが。
「ほう」
「あと…ヨガインストラクターも取りましたし…あの、それが何か?」
和臣さんは私の話を頷きつつ聞いて何か企んでいるような不敵な笑みを浮かべて、
「聖良、君はそれらの資格を頑張って取得したんだよな?」
と当たり前のことを尋ねる。
「え、はい、勉強致しました」
「自力で」
「専用テキストと、はい、独学と」
「何のためだ?」
「そりゃ…和臣さんの公私にお役立て出来るように…」
「僕のためにそこまで頑張れる、それは大した才能だと思わないか?」
「……いえ、仕事ですから」
「頑張れるのもひとつの才能なんだよ…じゃあ君の周りにそこまで資格を持つ人がいたらどうだ、その人は有能だと思わないか?」
「思いますが…それが何なんですの」
生きるために必要だから努力くらいする、役に立つ女だと思われないとやっていけないからここまでしてきた。
そんな飾りを付けなければ私は空っぽで何も無い人形だったのだから、人の役に立つにはまだまだスキルを身に付けねばならないと思っている。
あとテキストの段階だが保育士と介護士の勉強もしている。
意地でも和臣さん一家に張り付いてやろうと思っていたのだから取っておいて損は無い。
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