恋を知らないセクレタリー・ドール…心が無くても雇っていただけますか?

茜琉ぴーたん

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11章…命の実感

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「やッ…あ、らめッ」

「楽になれ、聖良」

「らめ、れすッ」

「ここはトイレだ、小便をするのが当たり前だろう」

「ひどりでッ…じまずがらァっ」

「僕が見せろと言ってるんだぞ?断れる立場か?」

「らッ…て、ェっ」

 今出せば和臣さんの手に掛かるじゃない、そして検査されてしまうじゃない。

 こんなに複合的に責めて来ないで、涙目になっても彼は指を動かすのをやめない。

「ほら、僕の手に掛けろ、紙コップ代わりだ」

「や、れすッ…や、や、」

「聖良、こっち向いて」

「やら、んッ…」

唇を塞がれて、沸騰した頭に蒸気孔が開いたように熱が逃げて肩の力が抜ける。


 穏やかだけど差し迫る快感、密着した唇が

「きよら、」

と動けば途端に体じゅうの細胞がゆるり脱力して栓がゆるみ…そしてぶるっと震う。


「あッ……あ、あ、」

ちょぼちょぼと水面を叩く音が便器内に響いてもちろん我々の耳にも届く。

 和臣さんは検査薬の先端を小水にかざしてそのままゆっくり床に置いて、後は私の唇に集中した。


「ん…聖良、よく出来た…可愛かった」

「ひろいッ…れすわッ…こんな、こんな…」

「すまない…ちょっと虐めたくなったんだ…君は自分のことを隠し過ぎるから…こうでもしないと素を見れない」

 こんなのは素ではなくて隠しておくものなのに…如何いかに仲が良くとも見せびらかすものではないしこれではまるで変態だ。

 だって排泄は快感も伴うのだ。

 溜め込んだものを排出すれば腹はすっきりするし爽快感に晴れ晴れとした気持ちになる…私だってキスをしながら感じていた、だから双方変態だ。


「和臣さん、先に手を洗って下さい」

「そうだね」

「…あの…もう、流しても…」

「あぁ、……聖良、黄色過ぎないか?ミカンでも食べたのか」

「もうっ…見ないで下さいまし!…ビタミンのサプリを飲んでいるとそうなるんですわ…」

便器を覗き込むその顔を手で逸らしてトイレットペーパーを巻き取る…足元の検査薬が気になるがささと拭いてショーツとズボンを引き上げた。


「水平に置いて1分か…どうだろうね」

「…分かりませんわ…でもたぶん……ほら……あぁ…」

 2つの小窓にはそれぞれ赤い線が浮かんだ、こんな気持ちで命を実感せねばならないのが辛い。

「聖良、陽性だ…おめでとう」

「…ありがとうございます…」

「リビングへ戻ろう、温かくしなさい」

「はい…」

 どういう心境なのだろう、愛人に子供が出来たなんて…何故この人はこんなに嬉しそうなのだろう。

 私ははっきり「堕ろす」と伝えたはずなのに、どうしてこんなにも私を慈しむ表情が出来るのだろう。

 私ははなから愛人で子供どころか結婚さえも求めていないと言ったのに、何がこうも彼の父性を引き出しているのだろう。

 そして認めたくないが私にだって母性が芽生え始めている。

 陽性を目視した途端に体が重く感じ、とてつもなく大変なものを負った気になり堕胎だなんてしたくないとさえ思い始めている。



つづく
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