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2章…気の合う相手
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しおりを挟む「ここだよ」
「はい…わぁ…」
順番に用事を済ませていよいよご自宅へ、恐れ多いと遠慮したのだが本邸の玄関に案内され入らせていただいた。
「(大きなお屋敷…)」
さすが地域の名主のお家だ。
伝統的な日本家屋は迷路のように入り組んでいて私はもう今通って来た玄関までの道が分からなくなっている。
「浦船でございます、伸夫先生の秘書を務めさせていただいております。新人ですので至らぬ点があるかと存じます、ご指導のほどよろしくお願い致します」
「まぁそんな固くならずに。いらっしゃい、これからよろしくね」
「恐れ入ります」
きさくな奥さまにご挨拶をしてお庭が見える和室にてお茶で一服、「作法なんて要らないわ」と言われたので遠慮なく饅頭にも手を付けた。
「美味しい……先生、広いお家ですね」
「広いだけだよ、親父はこういういかにもな権力を誇示するのが好きなんだ」
「そうなんですか」
「下品だよ…ここだけの話、親父が極楽に召されたら減築してやろうと思ってる。それか売って引っ越しだな…娘も進学で出てるし、僕は妻と狭い家で過不足無い生活ができればそれで良いよ」
先生のマル秘計画を、奥さまはバツが悪そうにはにかんで聞いている。
不謹慎だけど同意なのだろう、先生が不在の間はご隠居と住み込みのお手伝いさんとここに閉じ込められているのだ。
広い屋敷といえども息が詰まる。
長男の和臣さんも同居ではあるが日中は仕事で居ないから同じことだし、ご隠居は体はまだお元気らしいが食後の薬だとか気にかけてあげねばならないそうだ。
いっそ奥さまも東京へ、と考えもしたが支援者の居る地元に住まずして地盤云々とは声高々アピールできないそうで、やはり土地家屋と共に残ってもらうしかないらしい。
「母さん、親父は?」
「後援会の方と会食だと言って出られましたけど…事務所でお会いになりませんでした?」
「いや、何も聞かなかったな…まぁ何かあれば連絡があるだろう」
「そうですね」
「(お出かけ…か…わざとかな)」
私の『買い主』であるご隠居だが、私は今回は直接お目通りしない方向で動いている。
末端秘書がご挨拶を申し出ること自体非常識だし、泣く子も黙る元大臣大先生とあってとても恐れ多い。
まぁ口を滑らせて計画が漏れでもしたら困るし会って良いことも無い。
向こうから言われない限りは全くの他人として振る舞うのが良いだろう。
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