恋を知らないセクレタリー・ドール…心が無くても雇っていただけますか?

茜琉ぴーたん

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7章…契約の不履行

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 エレベーターで上階へ上がり部屋へと入れば、扉のオートロックの「カチン」という音が鳴ると同時に和臣さんの首元へと腕を絡めた。

 しっとりと悲恋系の展開も考えたが妻への不義理を看過できる人ではない、私の味を覚えさせたままずるずる決断を先延ばしにさせようかと思う。

 不倫をする人が何も悪人とは限らない、優柔不断だったり愛を潤沢に持っていたりするだけで本妻を蔑ろにする人ばかりでもない。

 一夫多妻でどうにかいけないだろうか、体を使って懐柔してみることにした。


「おい、聖良、なに…やめなさい、今は真剣な話を」

「そんな恐い顔をしていてはまとまる話もまとまりませんわ、一旦繋がって、お話し合いをしましょう」

「やめ、おい、やめないか!」

「和臣さま、強引な女がお好きでしょう?興奮してらっしゃる」

上等なスーツがシワにならないよう脱ぎ落とさせてシャツとトランクスの惨めな姿に、私も半端にドレスを着崩して乳房をこぼす。

 そうよ貴方は私が好きなんですもの、私がまたがり可愛がってあげればつるんと私の中へと収まってくれるはず。

 この話し合いは騎乗位で決める、ベッドへ押し倒して馬乗りになれば彼の股間は更に盛り上がって…

「襲われるセックス、お好きですよね?」

と局部同士を擦り付ければ和臣さんは情けなくとろける表情で口を開けてしまった。

「あ、きよら」

「お好きでしょう?騎乗位」

「やめ、あ、聖良…あ、」

「女の私に抵抗なさらないんですもの…本当は、こうして強気に襲われるのがお好きなんですよね」

「なにを、言って、あ、あ、」

図星を突かれた和臣さんは耳まで真っ赤になって私を下ろそうと掴み掛かる。

 私が「あん」と嫌がればすごすごとその手を離してもどかしく指を擦り合わせる。


 冷静な議論なんて要らない、どちらに転んでも立場を失う危険があるならば楽な方を選ばせてもらおうか…そう思ったその時、

「きよ、ら、僕は、君が立場を気にして別れると言うなら…議員なんかならない、県議も諦める!」

と私の今後を左右する爆弾を投げつけられた。

「は、何を…」

「立場がどうとか、身分がどうとか、気にするなら僕は民間企業に就いてそんなもの関係無くしてやる、」

「えぇー…」

 それでは困る、和臣さんが何を経てでも国会議員になってもらわなければご隠居の望みが叶わないことになる。

 それは即ち契約の不履行に繋がる重大な問題、私が愛人になろうがなるまいが議員先生になってくれなければ私はお払い箱になり契約金を借金として負わされてしまう。

 これはまずい、和臣さん自身が議員を目指しているからそこは揺らがないと思っていたのにたかだか恋人のために投げ打つなんて愚かなことをするなど想定外だった。


「何だその反応は、君は僕が議員にならなけりゃ無価値だと思っていたか?」

「そういう訳では…ないですが…」

嘘です、無価値は言い過ぎですが議員先生になってくださらなければご隠居とのそもそもの契約の土台が崩れてしまうんです。

 ここの説明を端折はしょるのは難しい、いち秘書の私がここまで出馬にこだわるなんておかしいし。


「(国会議員になること前提の契約なんだもんな…民間だと愛人の世間体とかあんまり関係無いし…)」

 私も交際が長くなって油断が出ていたか、ぐるぐると考えに考えて、しかし騎乗はやめずむにょむにょと微動を繰り返しやっと口を開く。


「…和臣さま、実は私、ご隠居さまに頼まれて派遣された者なんです」

「…は、じいちゃんの?」

ここに来て全く関係無いであろう祖父の登場に、私の陰部に挟まる和臣さんは少しだけ萎えた。



つづく
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