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しおりを挟む翌日、終業後。
「秋花ちゃん、私ね、彼氏できたんだぁ」
「…ふーん…」
道理で肌艶が良いと思った、駐車場で遥に呼び止められた同僚の守谷秋花は程々の反応を彼女へ返す。
遥の「彼氏できた」宣言は割と頻繁だし珍しいことでもない。
えらく前回より間が開いたものの取り立てて騒ぐようなことでもなかったのだ。
「え、『誰?』とか聞かないの?」
「んー…誰?」
「ふふ…驚かないでよ……なんと、モジャでーす♡」
「へぇ…」
「なにそのリアクション」
秋花は遥の惚れっぽくてグイグイ攻める性格は知っているし、依存度が高く彼氏を連れ歩くことで自身の価値を上げるという考えで生きていることも理解している。
その考えが未だ変わってないとすれば同僚と交際するだなんてよほど切羽詰まっているか妥協したか…なりふり構わず焦っていたのかな、なんて邪推してしまったのだ。
「いや……同期やから仲はええけど……はぁ、」
「あ、手近なところで手を打ったって思ってるでしょ」
「思うてへんよ…私も社内恋愛やし」
「私浮ついてるじゃない?モジャってばガツンと叱ってくれるじゃない?なんかビシッとハマったっていうかぁ、合ってるんだよね♡」
「ふーん……へぇ…」
普段から馬鹿にし合ったり罵り合ったりと気心は知れていたが恋愛方面に走るとは意外だった。
秋花はいよいよ「年貢の納め時か」とニコニコと惚気る遥へ相槌を投げる。
「ふーん……遥、ジーンズの男とはデートせんって言うてへんかった?」
「そうだっけ?気取らない男が一番だよ」
「へぇ…まぁ…幸せそうやからええけど」
「ふふっ♡」
蕩けるような笑顔、これまでのどの交際報告よりも落ち着きかつ幸せオーラの出た遥の様子に秋花も目尻を下げ、二人の前途を祝った。
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