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しおりを挟む「そういうわけだから…悪かったな、ハルカを抱けなくて…あとアンタ、車もフェイクって恥ずかしくねぇの?」
「フェイク?なに、直樹?」
「あれ、本体は10年落ちの別の車種。エンブレムだけ付け替えて…まぁ車に疎い女子なら騙せるんだろうけど…ダセぇことしてんね」
「え⁉︎そうなの⁉︎」
国内メーカーの大衆車に高級ブランドのエンブレムを付け替える、ギャグとして楽しむ者もいたりはするがケルホイはこれで女を釣ってもいたのだから悪質な部類に入るのかもしれない。
車に関わる仕事をしていても車輌自体にはさほど興味が無いので仕方ないか、「高級ブランド」の名にのせられた遥を心の底では指差して笑いながら長岡は優しく見つめる。
「ハルカ、先に乗ってろ」
「う、うん」
そして助手席のドアを開けてエスコートしてやればケルホイにもこれが外車だと分かったのか、スッと一歩引いて電柱へと寄り掛かった。
長身ひょろひょろの長岡だが夜の暗さと街灯の明るさだけではその素性はおろか気性さえもよく悟れはしない。
話し振りは理知的だが今にも危険物で攻撃してきそうなサイコな怖さを纏っている。
「んじゃ…ケルホイさん、本名は知らねぇけど…サヨナラだな………あ、最後に教えてよ」
「な、なに、」
殴りかかられる危険に怯えるケルホイへつかつか近付いた長岡は、
「なぁ、コイツのま◯こってそんなによかったの?リピートしたいくらい」
と囁いて見下ろした。
「は、」
「アンタ、ケルホイの社員だって騙った後に街コンでもコイツに声かけたろ、顔がタイプなのか?同一人物だって気付かなかったみたいだけど…んでまた思い出して電話してきたんだろ?そんなにハルカって床上手なのか?それとも獲物が居ないときの暇つぶし?」
「え、その、」
「教えてよ」
「あの、き、気持ち良かった、です、」
「へぇ…ハルカもアンタのエッチはよかったって言ってたよ、騙されたって分かった後も言ってたよ…お前さぁ、馬鹿な女を騙すのは好きにすりゃいいけどさ、こうやって反撃されることも覚悟してんだろうな、俺がヤベェ奴だったらこんな話し合いじゃ済んでねぇぞ?」
「は、い、」
「…なんか拍子抜けだな…まぁいいや…ハルカの電話番号は消しとけよ、二度と俺らの前に現れんな…あ、あと勘違いすんなよ、お前がどこ勤務だろうがいいんだよ。嘘ついてたことが問題なわけで……じゃあな」
詐欺をするくらいだから相当に狡猾で口撃の上手い奴だと思って内心ビビっていたがそうでもなかった。
所詮は立場の弱い人間にしか強く出られない小さな男か…長岡は運転席まで回って乗り込み、わざと大袈裟にエンジンを蒸す。
静かな道路と駐車場にアメ車の重厚な振動音が響き、ケルホイはまたビクンと慄いた。
「…あんな男だったぞ、最後なんか話すか?」
「いい…顔も見たくない」
「ん、出そう」
話したいと言えばそちら側の窓を開けてやろうと思ったが完全に吹っ切れたようだ、長岡はケルホイを巻き込まないように大きく旋回して車道へと出る。
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