馬鹿でミーハーな女の添い寝フレンドになってしまった俺の話。

茜琉ぴーたん

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 とある日の夜。
 会社の駐車場に停めた長岡の車の後部座席へ仕事終わりの遥は乗り込んだ。
「お待たせ、あの」
「ん、出せよ」
「待って………はい、」
 バッグから遥がおずおずと取り出したのは操作部と振動部がコードで繋がれたいわゆるピンクローター、これは彼女の自前の品である。
「やらし、自分で入れろよ、」
「うん……うわ……うん、できた…」
遥は自分の手で振動部をパンティーストッキングとショーツの間へ挿し、ちょうどクリトリスの位置で止まるようにコードを引いた。
「リモコンの方、貸して」
「はい、……んッ♡」
 長岡は目を凝らして目盛りを読み、最小の微動を遥の陰部へお見舞いする。
「あ…ん…♡」
「物足りねぇかな?ハルカはエッチだもんな、」
「んン♡はァ…」
「じゃ、これリモコンは腰とかに差して、」
「は、い、」
無意識に敬語の遥は言われた通りローターの操作部をスカートのウエストから出してサイドポケットに入れた。

 なぜ遥がこんなことをしているかといえば、決して長岡が強いた訳でもなければ彼女が弱みを握られて仕方なくとかでもない。
 発端は昨夜、仕事終わりに遥が長岡を待ち伏せしたことに始まる。

「直樹、今夜ヒマ?行っていい?」
「いや…用事があんだわ…」
「そっか……デート?」
「彼女いねぇっつってんだろ…ツレとメシだよ。……なに、また悩んでんの?」
彼は珍しく作業着から私服に着替えて、上着の襟をぱたぱたとはたいては怠そうに遥を見下ろした。
「そんなんじゃないけど…添い寝したいなーって思って」
「はぁ、街に出てナンパでもされて来いよ」
「そんな軽い人嫌だ」
「詐欺師とエッチしたくせに何言ってんの」
長岡はフンと鼻で笑って運転席のドアを開ける。
「次の合コンはもうセッティングしてあるの、だからそれまでは新しい出会いは無くていいの、」
「俺との添い寝は不貞行為じゃねぇのかよ」
「直樹との添い寝はノーカウント、だって恋じゃないでしょ?」
「…確かにな」
しかし日常生活の一部に異性との添い寝・ボディータッチ・口淫が組み込まれているなら、いっそ感情を伴う浮気の方が純な気がする。
 長岡は前髪で隠れた眉間に数本の縦皺を寄せた。
「じゃあ大人しく家に帰るよ」
「……気が変わった。お前さぁ、そこの雑貨屋で大人の玩具オモチャ買って来いよ」
「は、なんでよ」
「添い寝するにも飽きただろ、遊んでやるよ…それとも持ってる?」
「も、持っ……てなくはないけど、」
まだ数台の車が残る駐車場で、遥は周囲を警戒しながら小声になる。
「何?バイブ?」
「…結婚式の二次会でもらった…あの…ローター?開けてないけど…」
「いかがわしい二次会してんなよ…ふん、明日だったら泊まらせてやるからよ、それ持って仕事終わりにここ集合な」
長岡は割と楽しそうに、そう言って自身の車へ乗り込んでエンジンをかけた。
 何を隠そう彼がこれから向かうのは行きつけの風俗店で、この後に待ち受ける嬢との逢瀬に分かりやすく高揚してしているのだ。
 浮き足立ったところを遥かに絡まれて最初こそ機嫌が悪かったが、自分との添い寝を求める彼女を見ていると次第にエロティックな気持ちになり…ついあんな提案をしてしまった。
 きっと明日になれば賢者タイムのようにさっぱりとした頭で遥を邪険にしてしまうだろう。しかし今のこの時においては「可愛い奴め」といじらしく感じている。
「分かった…」
「じゃーな、」


 そして1日後の今夜、やれやれ感漂う長岡は仕事が終わってすぐの遥の下着へローターを仕込んだというわけである。
 好みの嬢と致してスッキリしている長岡、プロに比べれば顔も体も十人並みの遥の相手などお安い御用で、
「ほら、行ってこい」
と運転席から早く出るようにハッパをかける。
「ん、待って…あ♡や、だ、」
「腰グネってんぞ、不審」
「だって、あ、」
 もじもじ、くねくねと捩る腰は尻文字でも描くかのようで可笑しい。しかし擦り合わせるストッキングの膝の白さは少しだけ長岡好みだった。
「ノーパンで行くか?」
「バカっ…あ、やだぁ♡」
「コーフンしてんじゃねぇか、淫乱」
「ん、あ♡だめ♡はー……あ、んッ♡」
「ん、行って来いよ。戻って来たら抜いてやるから」
彼が遥に命じたのは簡単なミッション、更衣室のロッカーに忘れ物をしたていで戻りイかずに帰還するという…変態的な遊びである。
「う、ん、あ、」
「不自然だな」
「仕方ない、じゃん…ん、」
 遥は車から降りて、先ほどまで働いていた社屋へとよろよろと戻る。
 車内の長岡は興奮しきることもなく、そのおぼつかない足取りを眺めては今夜の夕飯のことなどをぼんやり考え始めていた。
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