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しおりを挟むともあれさくさくと夕食を済ませた二人は一緒に風呂へ、遥はかのデリヘル嬢並みにサービスしようと張り切るも「しなくていい」と本気で止められたために大人しく自身の入浴に徹した。
「並んで浸かれる浴槽希望ぅ…」
「ふー……ファミリー向け物件じゃねぇとなかなか…」
「ん…あ、見てよ。カピカピになってる」
「ごめん」
巻き髪をほぐして湯に馴染ませると手先には糊が乾いて固まったような感触、それが夕方に噴射された長岡製の物だと暗に伝えれば男は狭い湯船で頭を下げて詫びる。
「直樹もしっかり洗いなよね…固まってんじゃないの?」
「まぁね」
つい数時間前には目の当たりにしていたモノ、出して当然の浴室で見るソレは丸っこくちょこんと男の股座に隠れていた。
「なんか私も緊張しちゃう…初めての時みたい」
「…俺もだよ」
「ちょっとロマンチックになってきたね」
「そうか?……素面で…明るい所で見ると違うな…ハルカ、キレイだな」
「やだ、褒める派?演技とかやめてよ?」
「…人がせっかく…」
ムードに乗ってやったのにスカされる、長岡は濡れた髪をわしわし掻いて今更に照れる。
「ハルカ、俺は…どんなキャラクターで抱けばいい?どんな俺を望んでる?」
「んー………どうだろ…素の意地悪な感じも良いけど…労って、優しくしてくれたら嬉しいかな」
「…努力する」
汚い部分も下衆い所も曝け出した相手がそう言うのだ、多少の無理だってしてやろうか。
長岡は浴槽から上がり、シャンプー中の遥の背中を撫でてから脱衣所へ出た。
「ハルカ、先出てるから…ゆっくり準備してくれ」
「うん、ありがとぉー」
長岡は扉越しの籠った声を聞いてからタオルを腰に巻き、ベッド周りを片付けて掛け布団を整える。
ホテルの方が良かったか、そこまで勿体つけるものでもないか、しかし女性側の意見はどうだろうか。
かつてここまで遥に気を揉みもてなしたことなど無い、あぁと気付いて爪切りを取るその手は震えていた。
「(ドキドキ…してんなぁ)」
ぱちんぱちんと爪を丸く、遥の柔肌を傷付けないように丹念に摘んでいく。
どこをどう触るなんて考えてない、順番も分からない。
けれど少年のように心は躍りわくわくと高鳴り…浴室の折れ戸が開く音が聴こえると長岡はびくんと体が強張り、爪切りを足の甲に落下させた。
「上がったよー」
「痛てぇ……おう…」
「緊張してる…直樹かわいいんだ♡」
「うるせぇ…好きな女抱くの初めてなんだ…緊張もするわ」
長岡は傷めた甲を摩って、爪を載せたティッシュを丸めて立ち上がる。
振り返ればほかほかと湯気を上げる遥がバスタオル一枚で立っていて、その顔は先ほどよりさっぱりしていた。
「…化粧落とした?」
「うん…なんかパリパリするから」
「…悪かった」
「いいって……スッピンだと興奮しないかな?」
「いや、こっちの方が好き」
ティッシュをゴミ箱へ落として爪切りを元の位置へ戻して…つかつか遥に寄れば見つめるその目線は徐々に顔へ、もう慣れてしまった角度に傾けて口付けを交わす。
「ん♡」
「ん…あったけぇな」
「うん…直樹、心臓バクバク言ってる」
「湯上りだから」
「ふふ、そっか…ねぇ、静かにした方がいい?」
「いや…喋って…賑やかにしてくれていい」
「うん、じゃあイチャイチャしよ♡」
ぴょんと跳ねた遥は男の頬へ唇を届け、細い身体にぎうと抱き付いてその感触を味わっては自身の心拍もまた彼へと伝える。
「ハルカ…何だろうな、この感じ…ムラムラとは違う…」
「気持ち悪い?」
「違う、ムズムズ…うずうず?」
「楽しみな感じ?」
「何だろうなぁ…触りてぇ」
「うん、触って♡」
その言葉を皮切りに遥のバスタオルは床に落ちて裸体が露わになって、
「きゃ、」
と彼女が叫んだ時には座卓の横の座布団へその尻は降りていた。
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