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1月・勇者はあられもない
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しおりを挟む「はぁー…」
陽菜子はワイシャツのボタンを一旦全て外して袖を抜き、ピンクのブラジャーを取って助手席へ置く。
「いいねー…ヒナちゃん…かわいい♡」
「健一さん、日に日に変態になってませんか?」
「失敬な…てか元々がそんなに真面目な人間じゃないんだよ、よし、シャツ直して…ご飯買おうね」
第一ボタンまできっちり留めてカーディガンを羽織り、助手席に戻るために屈んでコンソールボックスを跨げば水風船のように2つの丸みがぽよぽよと柔らかそうに揺れる。
「うわァ♡けしからんね、ヒナちゃんのおっぱい、」
「健一さんがさせてるんでしょう!もう、行きますよっ」
靴を履いて鞄を抱き、陽菜子は先に車を降りた。
すると停まっていた車からエンジン音と助手席の窓が開く音がして、
「スーパーの駐車場に入れ直すから、歩いて向かっててよ」
とフロントの日除けを畳んだ嘉島が声を掛ける。
「は、ちょっと!」
「すぐそこだから、じゃ」
嘉島の車は北店の駐車場をぐるんと旋回してスーパーの駐車場へ、50メートルほどの距離を陽菜子はひとりで追いかけた。
「なんで私が…こんな…」
歩けば胸は弾んで先端がワイシャツを擦り、ペンダントトップはペチペチと肌を叩く。
ワイシャツが張り詰めるほどに胸が大きければ揺れて擦れたりなどしないのだろうか。
服との間に隙間が有るからこそ、このように足を出すたびに揺れて擦れて、擦れるから勃って…陽菜子はそこばかり意識しながらスーパーの入り口まで歩いた。
「頑張ったねェ…ちょっと見せて?あ、乳首勃ってるわ、ヒナちゃん…エロ♡」
合流した嘉島はカーディガンを少し寄せて胸の具合を確認し、予想通りの出来に実に爽やかな笑みを浮かべる。
「早く、買って帰りましょう…」
その顔は嫌いじゃない、キュンとしてしまう悔しさを噛みしめながら陽菜子はカートを押し、目ぼしいものをカゴへと収めていった。
「どう?擦れてる?」
時折そう尋ねては本人の口から「擦れてます」「揺れてます」「勃ってます」などと回答させ、日中の眉間の険しさは何処へやら…嘉島は珍しく甘い菓子などカゴへ入れてしまうほどに浮ついている。
そこへ
「あれ、嘉島副店長?お疲れ様です!」
そう声がしたかと思うと、北店の嬉野が同じく買い物をしながら睦じい二人の様子をまじまじと見つめていた。
「あ、お疲れ様…もう終わったんだね、」
「はい、私は今日は早番なので……あの、副店長、そちら…ご家族の方ですか?」
「!あ、…」
嘉島の横でもじもじと顔を隠し俯く陽菜子が少し顔を上げてペコリと頭を下げれば、
「うん、うちの奥さん。可愛いだろ?年の差夫婦だよ」
と素の笑顔で言うもんだから、嬉野も陽菜子も何故か嘉島本人も皆で頬を染めてはははと笑い、そのまま流れるように自然に別れた。
「あァ…驚いた…スタッフも買い物に来るんだな、元々が生活圏だから意識してなかったわ…あの人ね、レジプロだよ、20年は働いてる」
「け、健一さん……お、奥さんって…」
「うん、ダメだった?」
「いえ、あの……嬉しい、です…」
ただの家族と言えば親子だと思われたかもしれない、答えなければいかがわしい関係だと思われるかもしれない。
考慮した上での回答だったが、結果としてはそれで正解だったと嘉島は胸を撫で下ろす。
事実可愛いし年の差はあるし…本当に、いずれ貰うつもりでいるのだ。
「怒ってない?ノーブラショッピング」
「怒…ってますけど、許します…。帰ったら…褒めてくださいね」
「うん、たくさんね」
二人は買い物袋を分担して持ち、陽菜子はしっかりと助手席に座ってマンションへと帰るのだった。
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