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12月・勇者は頑是ない
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しおりを挟む「ヒナちゃん、ぬるぬる」
上質な泡を些か不名誉に形容し、嘉島はそのぬるぬるをバックハグした陽菜子の全身へ手で塗り広げる。
「ん♡あ……ッふぅ…あん♡」
所々肌色が覗く程度にソープ塗れにされた陽菜子、仕事終わりでも楽しそうに自分を玩具にする男にこの後の展開を期待してしまう。
優しいセックスはもちろん好きだが、時折垣間見える「やめて」と言っても押し切ったりする凶暴性・嬲るような攻撃的な視線…あれには正直ぞくぞくして敵わない。
今夜で3夜目、回数にすると4発目…昔話の様にギラついた嘉島を引き出してみたい、強引にされてみたいのだ。
今嘉島は陽菜子を胸に収めて泡でそこかしこを弄り、さぞかし支配感に浸っている事だろう、猛りが腰に当たってむずむずとする。
「あ、健一さん、あの、」
「なァに?」
「その6年前のクリスマスの彼女さん…どんなエッチをシたんですか?『恐い』って言われるからにはその…夜も…」
「はァ…」
嘉島は顎を陽菜子の肩に置き、肋骨の上を乳房の形に沿って指を滑らせる。
「荒々しいとかじゃなくて…エネルギーがあったんだよ。決して乱暴なことはしてない……はず」
「はず」
「とりあえず、今夜は寝かさないから。精力剤も飲んだし……頑張ろうぜ、ヒナちゃん」
自身の体は陽菜子の泡を貰って手早く洗い、照れる彼女の返答は待たずにシャワーで流して浴室を出る。
「バスタオルだけ、足は拭いてね、」
「は、い……よいしょ…」
湿ったタオル越しに陽菜子の腰を抱き、嘉島は顔の水気を手で切りながら寝室へ向かう。
「ヒナちゃんさ、元カノ話とか嫌じゃないんだね」
「はい。長い人生、そりゃ色んな経験がおありだと思ってます。それも健一さんを形作ったパーツの一つとすれば、なんて事なく受け入れられますよ。その方達に振られたから今こうして居られるわけですし」
「俺が振られた前提なのが腹立つな…まァいいや。ヒナちゃん、元カノとのセックスが気になってるのかァ」
クローゼットの奥からスキンの箱を取り出し、嘉島が不敵に嗤う。
「まぁ、あのー…エピソードとして知っておけたら…今はギラついてないわけですしッ、きゃ」
室内灯は前回よりも明々と、照れ隠しに饒舌になった陽菜子をベッドへ押し倒してその顔を見下ろし、嘉島は笑うのをやめた。
「昇進してね、なんでも出来る気になってたよ。忙しくて、でもそれが心地よくてね。彼女も…何でも許してくれると思い込んでた。2年くらい付き合ったし、ゆくゆくは結婚するもんだとも。夜は自分本位のセックスばっかりね…ヒナちゃんをそんな抱き方したくないけど…雰囲気だけでも感じてみる?」
「あ、は…い……でも、痛いのは嫌ですよ」
「SMは趣味じゃないわ」
嘉島は陽菜子の言葉にまたくしゃっと表情を崩し、そのまま下を向いてスキンの準備を始める。
「ヒナちゃん、うつ伏せになれる?」
陽菜子は嘉島の脚の下でくるりと体を回して顔と手をピタとシーツへ付けて、伏し目がちになり男を待った。
「わんこみたいなポーズになるよ、」
準備ができた男は細い腰を持ち上げて彼女を四つん這いにし、潤滑剤に少し頼って早々と…挿入した。
「あ、ッ…あ、ア♡ぅがッ、あッ、やッ、あ、」
「バックばっかり、だったなァ、あの頃、は…前戯もナシ、」
ゆっくりねっとりと反応を見ながらのセックスは出来ていなかった。
あの時の彼女には本当に申し訳ないと嘉島は本心で思っている。
「は♡、ゔぁッ…あ、やだっ、コレッ…あ♡」
「あー……すげ…ヒナちゃん…やらしいなァ、ん、」
「健一、ざんッ…あ、やだ、声、出ちゃうッ!や♡ハぁ♡」
「俺もさァ、ヒナちゃんに…慣れたらッ、…また、労わらないセックスしちゃうかも、なァ、昇進、しちゃうしな、」
これから嘉島はおそらく副店長に正式に昇進する。
そうすれば確実に今よりも忙しくなって以前のようなギラつきを帯びて…しかし体力と気持ちは抜けて…性処理としてぞんざいに陽菜子を抱くかもしれない。
「あン♡は、……ひぅッ♡そこ、あ、やだッ♡あ、」
「当たり出したね、腰落として、普通に寝ていいよ、…うん…少し浮かせて…そう、上手だね、ヒナちゃん」
寝バックもなかなかに楽な体制、嘉島は小刻みに突きながらいいところを探る。
「ふぐゥッ…♡…ヒぁ…ふゥ♡は、アん♡ハ…げんいぢざ…ン♡」
「顔が見えないのが欠点だよね…いい顔してんだろうなァ、ヒナ、こっち向いてごらん…」
陽菜子はすぐ真上からの甘い囁きに耳を貸すことも出来ず、
「やッ、むリぃ…っっあ!ひっ♡もォ、あ、ア♡」
と苦しそうな息と淫らな声を織り交ぜながら応えた。
「すぐにイけなくてもいいよ、付き合うから。ギンギンなんだよ、治まる気がしない。感覚無くなるまで抉るわ、ヒナ、頑張って」
「ゔあ♡はー…、ひン♡やらッ、ア、ずっと、あ、気持ちッいい♡、やだァっ♡」
夜は長い、果ての見えぬ二人の初めてのクリスマスはこうして…ねっとりたっぷりの愛を交わして過ぎて行くのであった。
つづく
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