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11月・勇者はしどけない
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しおりを挟む「うん、で?彼女以外はイモ…うん、…うん、イモって2回言う必要あったかなァ?葉山くん」
嘉島は再度パソコン教室を借り、接客が済んで定時を回った葉山に聞き取りを開始していた。
「そうなんだから仕方ないですよ…チーフだってそうでしょう?」
「いや、さすがにそこまでは思わないよ…彼女が可愛いのは当然だけどね。ふー…しかし、あれだなァ…君たちは…」
「なんですか」
「んー、似た者カップルだね」
「はぁ?僕は新庄さんとは何もないですよ?言ってるでしょう、年上の可愛い…」
「…だから、すっぱり物を言う感じとか、パートナーを賛辞するのとか…笠置さんと似てる、って言ってるんだよ」
「!」
隠している恋人・唯の名が出て、しかし葉山は追い詰められて開き直った悪役のようにため息を吐く。
「………確信されてるんですね…いつから?」
「お前、ハロウィンの日から仄かしてたじゃねェか……お前の片想いかと思ってたけど…あの怪文書が来てすぐだったかな、笠置にカマかけたら引っかかってくれてね。…おい…そんな怖い顔するなよ、彼女だって俺に仕掛けた手だぞ?」
愛しの恋人にちょっかいを出す男は全て敵視する葉山、瞬時にその眉間に縦筋を蓄えた青年に嘉島は怯え、両手で降伏ポーズをとる。
「でも、それ以前に薄々…んー……葉山…お前、俺になんか当たりが強いだろ?気になってたんだよ」
嘉島は急に上司から男の喋り方に変わり、葉山はキョトンとしながらもすぐに片眉を顰めて、ずいと身を乗り出した。
「タバコの煙、うちのユイさんに吹きかけたでしょう?あんなマーキングされると、挑戦状だと思っちゃうじゃないですか」
確かに嘉島は唯に副流煙を浴びせたことがあるが、それは本人から頼まれたからである。
「頼まれて、だからねェ」
「その後ももう一回あったでしょう」
「あれは、隣で吸ったから匂いが移っちゃっただけだよォ…」
「…上司じゃなかったらどうにかしてますよ」
「…怖いなァ…じゃあ、あれは気付いたか?財布の中」
「……あれのせいで、僕はえらい目に遭いましたよ」
「はは、ん?お前が?そう…まァいいわ…ふん…新庄さんがイモかァ……なァ葉山。お前が笠置を可愛がるようにさァ、俺もそのイモを可愛いがってるんだよ」
膝に肘をついて指を組み、嘉島はギョロンと目玉だけを動かして葉山を睨みあげた。
「……?」
葉山は当然言われた意味が分からずポカンとし、飲み込めてくると口をワナワナと震わせた。
「………嘘だぁ、嘘でしょ?………新庄…さんと⁉︎」
「声が大きいよ…」
「すみません………はぁ、は?本当にですか?……何歳差ですか」
葉山は屈み込み、ヒソヒソと聴き込みに入る。
「26。だからさァ…あの怪文書が来て、お前と仲良いとかって表現が非常に腹立たしくてね…嫉妬したわァ…あ、笠置も知ってるよ。あと、うちのもお前と笠置の仲は知ってる」
「えぇ、なんで僕だけ蚊帳の外だったんですか…早く教えてくれれば良かったのに…」
「…なんでだろうな、お前の反応を見て、笠置は遊んでたんじゃないかとも思うけどね」
「うわ…あり得る……汚い大人だなぁ…はぁー…そうですか…」
そこから嘉島は簡単に馴れ初めを話し、更に少し相談事をして報告書を仕上げた。
「さ、できた。悪かったね、関係ないことで時間取っちゃって」
嘉島はいつもどおりチーフとしての話し方と表情に戻り、そろそろ煙が恋しくなって葉山と解散する。
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