壮年賢者のひととき

茜琉ぴーたん

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11月・勇者はしどけない

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 買い物を済ませて後部座席に荷物と女性陣を乗せ、マンションまでのわずかな距離を走る。

「うわ窓にカーテン付いてる、やらしいな」

「ユイちゃん、チーフは立派なお部屋があるんだから、場所には困ってないって」

「あえてのカーセクちゃうの」

「車でってこと?嫌ぁね、チーフがヒナちゃんをこんな固い床に寝かすはずないじゃない」

「立ちちゃうか」

 運転用の眼鏡をかけて、

「君たち、もう酔ってんのか…?」

と嘉島がミラー越しに後部座席を睨むもそんなことは意に介さず、

「しっかし、見事に社内恋愛ばっかりやな、うちは」

唯はにわかに増えてきた社内カップルについて言及しだし、美月も応える。

「うーん、仕事に理解がある人じゃないと難しいもんね」

 確かに朝は遅く夜も遅い、土日祝も仕事、一般の会社員とは生活リズムが合わないのだ。

 呑み会だって閉店後の9時以降スタートがザラだし、週末のイベントなどには参加しにくい。

 一方で、平日の休みに融通が利くので子供の行事に参加しやすかったり、レジャー施設は空いていたりと良い事もある。

「子持ちにはええよな、フロア長も夏は家族旅行行けたみたいやで、平日でいてたって」

「ていうか、あたしのとこは別会社よ?」

美月の恋人・高石たかいしは配送スタッフだが、厳密に言えば提携業者…ムラタ雇用ではない。

「あの大男な、どやの?もうシた?」

「やだユイちゃん!」

「わーォ、知ってる人のエロい話って聞きたくない」

 嘉島は白目になりたいのを抑えつつ、自宅マンションの敷地へ車を入れた。


「それよりチーフ、ハロウィンの夜は燃えてんやろ?次の日腰痛めてたってうちのが言うててん」

「えぇ…あの私立制服J Kヒナちゃんを⁉︎それはもう犯罪じゃない…」

「勘違いだよ、してないよ、シてても犯罪ではないよ。刈田さんだって、俺が駐車場で見たのハロウィンの翌朝だったよ?」

「チーフ、それセクハラ♡」

「なんで俺はダメなんだよ。じゃあ二人ともお黙りなさいよ…せめて、酒が入るまで待って…」

 かしましい2人は喋りっぱなしで、嘉島は立体駐車場へ停めてやっと落ち着いた。

「てか、アラフィフでも勃つねんな、何か飲んでますのん?」

「黙りなさいって…」

 分譲の世帯に振り分けられた2台目の駐車場は平面側にあるのだが、まだそこに陽菜子の車は停まっていない。

 オートロックのエントランスを抜けエレベーターを待ちながら、嘉島は比較的話が通じる美月に提案を持ちかける。

「刈田さん、笠置さんを少し預かってくれる?いや、ヒナちゃんより先に、君たちを部屋に上げるわけにいかないんだよ。そっちの部屋で待っててくれる?」

「うわ…『ヒナちゃん』やて、生々しい…」

「そこ引くなよ」

「チーフは紳士ね。そうね、あたしの部屋で待ってましょう。さ、ユイちゃん、階段でいいわね。チーフ、また後で」

「また」

 このまま連絡を断つという手もあるのだが、唯が居る以上ろくな事にならないだろうと、嘉島は素直に連絡をするつもりでいる。
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