壮年賢者のひととき

茜琉ぴーたん

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10月・勇者はあどけない

22.5

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 身支度をして、陽菜子ひなこを後部座席へ乗せて立体駐車場を出る。

健一けんいちさん、あの黒い車、ミツキちゃんの車に似てません?」

敷地内を徐行していると、平面駐車場に停めてある黒の普通車スカイラインを指して、陽菜子が尋ねた。

 これは同僚・刈田かりた美月みつきの愛車である。

「刈田さん?うん、ここの2階に住んでるよ…」

「そうなんですか⁉︎あ…男の人が運転席にいる…彼氏さんでしょうかね…ミツキちゃんもいる…手振ってみようかな」

 それを聞いて嘉島かしまも身を乗り出し助手席の窓からそちらを覗けば、運転席には大柄な男性…会社の関係者か、ハロウィンでもなんとなく見覚えがある気がした。

 美月もこちらに気付き、会釈をするが後部座席の陽菜子を見て固まったようだった。

 珍しく間の抜けた顔がカカシのように棒立ちになっている。

「…ふん…また説明しなきゃな…ベルトしてね…」

美月は面白がって言いふらすような子では無いから改めて説明すれば良いだろうと踏み、正面出入口より車を出した。


 これが、美月に二人の関係がバレた経緯である。
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