壮年賢者のひととき

茜琉ぴーたん

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エピローグ・賢者は大人気ない

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 年明け…。

 憑物つきものが落ちたのか腑抜けになったのか、少しだけ以前のような穏やかさを取り戻した嘉島に追い討ちをかけるように、本社からとんでもない通達が舞い込む。

『フロア長・英田あいだに横領の疑いあり、本社より監査部が入る。英田には自宅待機を命じる。証拠隠滅の恐れがあるため店に入れないように』

「はァ……?横領……ぁ、在庫が合わなくて…そういうことか…」

 そこから英田は部下や同僚にも一切姿を見せることなく店を去った。

 英田は店の商品を業者へ横流しして利益を得てデータを改ざん、被害総額は数百万円にも及ぶらしく、「なぜ気付かなかったのか」と管理職は揃って本社から叱責を受ける。

 売り払われた商品の割り出しと照合などの後始末が済むと店長は本社管轄の店舗へ転勤、嘉島をはじめ管理職は社内規定や今で言うコンプライアンスに関わる要綱をみっちりと学ばされる研修合宿へ参加させられた。

 そして戻ってくると嘉島は売り場から外されて、レジと営業事務…「金」を扱う部門のフロア長に変えられる。

 その頃には嘉島はギラギラとした毒気が更に抜けて落ち着き、現在のような物腰柔らかい上司が出来上がったのだ。





「年を跨いだら急激に覇気が無くなって…中身が入れ替わっちゃったのかって…他の方は仰ってました…」

「うん…俺は結構権威とか役職に振り回されるタイプなのかもなァ。現に今、副店長になってワクワクしてしょうがないわ」

ベッドにて元カノ話を平気で聴きたがる妻・陽菜子ひなこに嘉島が昔話をしてやっていると、いつのまにか仕事の話へとシフトしていた。

「野心はあって当然ですよ、やる気が無い人には店を任せられませんから…あ♡」

「動いて欲しい?ヒナ…まだ我慢できるな?」

「は、い…」

嘉島は陽菜子を見下ろして繋がったまま、真面目な話をしてしまうこのシチュエーションに逆に興奮している。

「あの学生服のヒナちゃんも一回犯したいなァ、いい?お小遣いあげるから」

「それじゃ売春になっちゃ…あ…も、健一さん…動いて下さい、お願いします…むずむずしちゃって…苦しいです」

若妻は腰をよじって夫の責めを求めて、嘉島は可愛いおねだりに応じてゆっくりと動き出した。

「んあ……気持ちいい…スローペースなセックス …休みの前夜にこれは最高…痛くない?」

「大丈夫です…ぅあ♡は…エッチで…あ、いい、ですね…」

「うん…あー…このまま寝ちゃいたい、でももったいないね…ちゃんと種付けしてあげたいからなァ」

 これはコミニュケーションであり子作りの一環、入籍後2ヶ月経った今では嘉島夫妻は特に避妊はせず営みを行なっている。

「種付けって…やらしい言葉ですか?実家で普通に聞いてたから変な感じです」

「そりゃヒナちゃんは畜産業だから……、人間なのに家畜みたいに動物的に扱うのがエロスって…ことなんじゃない?……そうか…ヒナちゃんには何だったらエロいんだ?教えてよ」

「言わないですよ!」

むくむくと膨らんだり萎んだり、胎の中で大きさを変える夫を感じながら、陽菜子は口をつぐんだ。

 実際には「エッチな言葉」などろくに知りはしないのだが。

「ロマンチックな方が萌える?」

「んー…どうでしょう…ドラマとかもあんまり観ないし…」

「やっぱり強引な男かな?犯されたい願望あったりする?」

「無いですよ!あ、ひぅ♡」

見つめたままぐりぐりと押しつければ、深い所に当たってヒナコが悶える。

「締まってる…ん、ヒナちゃん、オジサンは高速ピストンとか体たないからねェ、お互い求めるセックスの形が違うな、ふふ…すり寄せるか…染めるか…難しいね」

「なに、あ、…ッ♡あ、」

「俺が勃たなくなっちゃったら、バイブとかローターとか…玩具オモチャも導入しようね、指は動くよう鍛錬しとくわ、」

 知らない単語が続いて混乱する妻をよそに、夫は自身が言った言葉によって興奮していた。
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