壮年賢者のひととき

茜琉ぴーたん

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10月・勇者はあどけない

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 それから支度をしてマンションを出て…車は順調に走り、嘉島のいつもの到着時間より5分ほど早めに会社駐車場に着いた。

 会社の人間にバレないよう駐車場から離れた場所で陽菜子を降ろしてやるために早く出たのだが、店から徒歩2分のコンビニは皆もよく使うし、あまり遠い所から歩かせる訳にもいかない。

 考えに考え、嘉島はいつも通り駐車場に入り、陽菜子の車の運転席側に駐車することにした。

 まさにドアtoドアで見つかりにくいし、店舗建物まで百メートルは離れている。


「では、また」

「あァ、またね」

 陽菜子は周囲を確認してからささっと降りて、マイカーに乗り込み嘉島もすぐ降りるがなぜか互いの車の間に入り、周りを確認しながら運転席の窓をノックして、窓を開けるようジェスチャーする。

「え?どうされました?」

 陽菜子が何かあったかと窓を開けて小声になると、嘉島はチョイチョイ、と人差し指で彼女を窓の近くまでおびき寄せ、無防備なその唇に素早くちゅうっとキスをした。

「今朝はしてなかったから。はは、行ってきます、すぐ出なさい」

「ふぁ、い♡」


 男は煙草に火をつけ、腰をさすりながら店舗までゆっくり歩く。

 陽菜子の車が駐車場から出て、ちらほらと遅番のスタッフの車が駐車場に集まり出す。

 初めての朝帰りは陽菜子にとって特別なものになったろうか、年齢を感じさせるだけだったようにも思う。


「ふー…」

 今日も忙しい1日の始まりをぞわぞわと感じ腰は痛む。

 店舗裏口の喫煙スペースで嘉島は車の動きなど見ながら煙草を吸いきり、仕事モードに切り替えて館内へ入った。



つづく
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