壮年賢者のひととき

茜琉ぴーたん

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9月・勇者は容赦ない

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 3ヶ月の試用期間に入るにあたり、嘉島は守るべき数点のルールをその場で作った。

【1】交際していることは公表しない。
【2】勤務時間内は私用な会話をしない。朝出勤してから夜タイムカードを押すまでは上司と部下の関係を守ること。
【3】プライベートでは互いを『健一さん』、『ヒナちゃん』と呼び合う。(陽菜子たっての希望)
【4】試用期間中は深い関係にならない。肉体的な接触を持たないこと。
【5】メールも会話も無視はしない。
【6】最終日には直接会って、結論を伝えること。


 そして嘉島は最後に「俺は何もしないからな!」と宣言したのだった。

 そして明日が3ヶ月の試用期間の最終日なので希望休の申請を出していた訳だが、陽菜子には多大な不満しか残っていなかった。


 ひと月目。

 嘉島は仕事終わりの会話も行動も何も変わらない。

 休日は出かけてしまいデートはできず、なら一緒に連れて行けと頼むも、はぐらかされて終わりだった。


 ふた月目。

 店は繁忙期もピークで、お互い疲れ切っていた。

 帰宅後のメッセージにもなかなか既読がつかなくなる。

 
 最終月。

 仕事が落ち着いてくると、この頃から松井まついが付き纏うようになった。

 陽菜子が金庫業務の日は必ず現れ、駐車場まで付きっきりで話しかけてくる。


 陽菜子は松井のアプローチに気づいてはいるが、告白される訳でもないので追払う事もできないのだ。

 そして嘉島との二人きりの僅かな時間を邪魔されてイライラしていた。

 結局この試用期間で嘉島がしてくれたのは仕事終わりのごはん(複数人)とメッセージへの返事だけで、今までと何も変わらない毎日、むしろ彼女(仮)の肩書きがあるだけに余計惨めな思いをした。
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