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2024(最終章)

76(最終話)*

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 ガーデンの真ん中にあるモニュメントの前で、私はやっと地面に降ろされた。

「遼平さん、ビックリしたよ」

「ふふ、力を誇示してみた」

「気分良い?」

 意地悪そうに問い掛ければ、

「あずちゃんは僕のものだ!って自慢できたんだ、気持ち良いに決まってる!」

とここ一番の爽やかさで返って来る。


『新郎新婦さまの新たな人生の門出に、盛大な拍手を!』


 私も誇らしいな、立派な旦那さまと一緒になれて。

 鳴り止まぬ拍手のシャワーに照れ照れと手を振り返す。


「(……言うべきかな)」

 遼平さんの同僚さんたちがソワソワと、進行状況を見ながら今にも駆け出して来そうだ。

 たぶん胴上げだろう、司会者さんが閉式をコールすると群がって来ると思われる。

「新婦さま、横にずれましょうね」

ドレスに隠れた介添さんも、そうリークしてくれた。

 体育会系にはよくあるノリなのかもしれない。


『お式は以上にて結びでございます…皆さまのご協力により、つつがなく進行できましたことを、お礼申し上げます…それではこれより披露宴のご準備に入られますので、新郎新婦さまはお先に退出されます…』

そこまで聞けば、同僚さんたちの反射神経たるやさすがだった。

 私は介添さんと共に芝生へと離れ、「え?あずちゃん?」と戸惑う遼平さんは黒い群衆に囲まれる。

「おい、お前ら」

「恒例だから。分かってたろ」

「おい、おい、」

「3回な、しっかり持てよ、絶対落とすな、…せーのっ‼︎」


「わーっしょい、わーっしょい、わーっしょい、」

 3度高く舞う遼平さん、戸惑いは早いうちに消えてすっかり笑顔になっていた。

 円陣を組んで笑い合う遼平さん、このサプライズは良い方向に働いたようだ。

 このノリで新婦も担がれることがあるらしい、ふいと同僚さんがこちらを向いたが介添さんが大きくバツを出して拒否してくれた。


 ふふと愛想笑いでいなして、髪の崩れた遼平さんの隣へ戻る。

「サプライズされちゃったね」

「あの勢いだと誰にも止められないだろうしな…薄々、分かってはいたけども」

「良い同僚さんたちだね」

「あぁ」


 以前ぼんやり聞いたのだが、遼平さんの同期でも後輩イジメに染まってしまっている人はいるのだとか。

 今回の参加者はクリーンな人ばかり、この世代で協力して良い職場環境を拡げていけたらと…遼平さんは志を抱いている。

 私たちみたいな特殊な出逢いはこれ以降現れないのだろう、そう考えるとちょっぴり特別感もある。


「披露宴も頑張ろうね」

「あぁ、その先も、ずっとな」

「かっこいー」


 堂々と胸を張って、私の旦那さまは私の手を引き歩く。

 見下ろしてニコと笑い、たまに「可愛い」とデレる。

 凛々しさと柔らかさのギャップ、それを楽しめる私だけの幸せ。

 これから肥えても痩せても、家族が増えても、一緒にのほほん生きていけたら良いな。


「遼平さん、愛してる♡」

「僕の方こそ、あずちゃんのこと、愛してる!」


 周りのスタッフさん達もつられて微笑む。

 控え室に戻る間でさえ、ラブラブな私たちは誰にも止められないのだった。




おわり
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