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2024(最終章)

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「遼平さん、よくよく考えたらシルバーのタキシードよりも黒い礼服の方が私が映えるよ」

「いや、金でゴテゴテしてるから」

「装飾は仕方ないって。さっきの写真みたいに、胸にお花飾ってさ、誇らしいじゃない。市民の安全を守ってる、私は遼平さんのカッコいいところ皆に見せたいよ!」

「……そう?」

「私、これ着て欲しい!お願い!」

「あずちゃん…」


 私は控えめな方なので人にお願いも要求もしない方なのだが、だからこそここぞの頼み事に効果を発揮する。

 私を輝かせるために礼服を着て欲しい、「私のため」を前面に押し出してのお願いだ。

「ずっと消防士するんでしょ、思い出と写真に残そう」

「う、ん…」

「それとも、これから1週間筋トレ禁止して筋肉落とす?嫌でしょ?」

「う、腕をしなければ良いんだろ」

「せっかく育てた筋肉をキープしたくないの?しおれちゃうよ?そんなの遼平さんの美学に反するんじゃないの?」

「確かに」

 決定打が筋肉というのが口惜しいが、遼平さんは折れてくれた。

 急いで家と式場を往復し、消防礼服を持ち込んでくれた。


「わぁ、カッコいい」

 袖の3本線にダブルのボタン、肩も胸もゴールドが輝かしい。

 羽織ってみてもピッタリ、ドレスシャツとネクタイに合っている。

 細身のタキシードとは違い、腕も肩も余裕があって動きやすそうだ。


「どうかな」

「良い、すごくカッコいい!」

「…なら、これにするよ」

 諦めたように笑う遼平さんだけど、ほのかに嬉しそうなのも感じられる。

 職務に責任と誇りを持っているんだもの、カッコ悪い訳がない。

「楽しみだね」

「…うん…ごめん、困らせて」

「良いよぉ」

「どうせだから、誇示しちゃおうかなぁ」


 遼平さんの最後の呟きの意味は、その時の私には分からなかった。

 その意味が分かるのは結婚式当日、チャペルからガーデンへと出るフラワーシャワーのタイミングだった。
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