街を歩いていると、見知らぬマッチョに体を担ぎたいとお願いされました。

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
34 / 44
2023

34

しおりを挟む

 食後、遼平さんのお誘いでホテルへと寄ることになった。

 彼はここらでも最安値クラスのアパートに住んでおり、とてもじゃないが私を呼べる広さではないそうだ。

 お金はあるだろうに何故かと聞けば、「ジムに入り浸ってるから、寝るだけだしもったいない」からなのだとか。


「あずちゃん、邑井さんに…何かされてない?」

「へ?されてないよ…なんか気色悪いから見ないようにしてたし」

「そう…無事に帰れたよな?」

「うん、うちの会社の人たちと一緒だったし、方向は違うんじゃないかな」

 ホテルの大きな風呂に浸かって、私たちはそんなことを話した。

 遼平さんの胸には、広く青アザが付いている。

 邑井は剛力なのだろう、奴に叩かれた痕が痛々しく残っていた。

 ちなみに、私の手と膝の怪我も少しお湯が沁みる。

「社名で検索して場所は把握してるんだけど、分団の倉庫があずちゃんの通勤ルートに少しかすってるんだよね…会わないように、気を付けて」

「心配し過ぎだよ。消防団って他にお仕事してる人が有志でやるんでしょ?」

「まぁね。休日の夕方に火の用心のパトロールしたりね。でも分かんないよ、あずちゃん可愛いから」

「…遼平さんが守ってくれるでしょ?」

 可愛げを振り撒いてそう尋ねれば、

「もちろん、全力で!」

と彼は私をお姫さま抱っこで湯船から持ち上げる。

「うわぁ」

「輸送しまーす」

「滑ると危ないよ、遼平さん、」

「今日もこうして抱っこしたけど、あれはドキドキしたなぁ」

「歩けたのに」

「筋力と愛情を顕示したくて」


 濡れた体でベッドにダイブして、コロコロと睦み合う。

 胸の青アザにそっと触れて、早く治りますようにと念を送った。

「あずちゃん、僕、初めて救助のためにあずちゃんを抱っこして、一層、何と言うか…そばに居たいと思った。こんな所で言うことじゃないと思うんだけど、これがキッカケってどうかとも思うんだけど…」

「うん、」

 逆光で表情は読めないけれど、その眼差しはきっと真っ直ぐで揺らぎない。

 その頬に触れて、彼の紡ぐ言葉に耳を傾ける。

「あずちゃん、僕と…結婚してくれないか。生活リズムはたぶんほとんど合わないと思う。でも少しでも一緒に居たいし、守りたいんだ」

「ジムは平気?」

「あずちゃんが居ない時に行くよ。こうしてまったりする時間が取れなくても、一緒に寝るだけでも安心できる。僕と、一緒に居て欲しい」


 彼が夜勤で居ない夜は私はひとりで寝なければならない。

 そして彼が帰って来る頃には私はもう出勤しているだろう。

 そんな日は遼平さんが私を「おかえり」と出迎えてくれるのか。

 悪くないかな、むしろ無事に帰って来てくれるだけで嬉しい。


「遼平さん、よろしくお願いします」

「…あずちゃん……あの、指輪とかはまた追々、その、」

「うん、先にシよっか」

「話が分かるあずちゃん、大好きだ!」


 それから遼平さんはチュッチュとキスを全身にくれて、慈しむように私を抱いた。

「…ッあー…ピクピクしてる…あずちゃん、締め過ぎ」

「何もしてないって…」

「子供も、欲しいな、」

 ぐぅと奥に近付いて、浅く下がってはまた深く挿して。

 トレーニングマシンを使うみたいに、遼平さんは楽しげに同じ動作を繰り返す。

「遼平さん、わざと負荷かけてない?」

「え、そんなこと、ない、ん♡でもこれ、太ももに、効くなぁ」

「トレーニング狂なんだから」


 笑う彼は唇で私を黙らせて、腕で私を囲って、最奥で果てた。

 汗を飛ばして本当に運動ジャンキー、成果をぶら下げてはまた「ふふ」と達成感いっぱいに笑う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...