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 そして仕事が終わっていつものファミレスに集合、本日もたくさん注文した遼平さんはバツが悪そうに口を開く。

「今日いた、あの人…邑井さんって言うんだけど、元先輩なんだ」

「あ、そうなんだ」

「何となく察したと思うんだけど、僕を…その、いじってたというか、強く当たってた人のひとりで。一応自主退職になってたからそんなに苦労してないみたいなんだけど…この近くの工場で働いてるらしい」

「なるほど」

 その暗い表情からは、軽い扱いではなかったことが窺える。

 なのに遼平さんは「虐められた」とは言わない。

「…久しぶりに再会して…正直びっくりしたよ。固まっちゃって、でも舐められないように頑張っちゃった。あずちゃんも見てたし」

「うん…堂々としてたよ、弱そうには見えなかった」

「そっか、なら良かった」

ニッコリ気が抜けたように笑う遼平さんは、猫型配膳ロボットの到着で更に口角を上げる。

 豪快にパクパク食べ始めれば、もういつもの遼平さんだ。


「これからもその人に会う機会はある?」

「んー、あの人ここらの出身なんだけど、地域の消防団にも入ったらしくて。出動時とか、訓練で会うことはあるかもな」

「…しんどくない?」

「職務中なら全然。僕も署内で立場も強くなったし、あの人にペコペコする理由が無いんだよな、本来は」

「なら…大丈夫かな」

ホッとして、私も届いた食事に箸を付ける。


 あの邑井も、真面目に働いていれば今の遼平さんみたいに出世していたのだろう。

 せめて今も元消防士の矜持きょうじだけは持っていて欲しいな、他人事にそんなことを思った。
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