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2023
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しおりを挟む「……」
「だんまりか、市民の質問に答えらんねぇのかよ、消防士さんよぉ」
「…業務がありますので、失礼しますね」
遼平さんは後片付けを済ませて、建物へと戻ろうと邑井へ背を向ける。
これ以上敷地内で騒いでも、邑井が悪者になるだけだ。
だから邑井も出口へ向いたのだが、
「……!」
動線上に居た私は奴と目を合わせてしまった。
盗み聞きしてたみたいで感じ悪いか、帰らずに留まっていたから不審だったか。
ずんずんと近付いて来るが、後ろに出口があるのだから過剰に警戒するのはおかしい。
「舞岡さん?社長トイレから戻ったから帰るわよ、」
出口に向かっていた専務がタイミング良く声を掛けてくれた。
咄嗟に私は「はいぃ」と、わざとらしくないよう努めて出口へ振り返る。
「(近くの会社なのかな…嫌な人だな…)」
背後に感じる視線と圧。
敷地を出て歩道へ抜けると、私の歩幅は大きくなる。
「どうしたの、そんなに急がなくても」
「お、お腹すいたので…早く帰りましょう」
「あら、まぁそうね」
専務は納得して、しかし訓練で疲れたのだろうスピードは変わらない。
私はとにかく後ろに居るかもしれない邑井の視界から逃げたくて、足早に信号付き横断歩道まで歩いた。
・
その後は何事も無くうちの社屋に着き、お昼を食べて少し休憩できた。
『今日はお疲れさまでした。働く遼平さんが見れて、嬉しかったです。』
そうメッセージを送信、終業後の連絡を待つことにした。
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