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2022・初お泊まり

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 荷物を片付けたら遼平さんと合流して、旅館の周りをゆるゆる歩いた。

 彼も考えるところがあったのか、いつもよりガッチリ手を繋いで体を寄せて来る。

「どうしたの、遼平さん」

「あずちゃんが不安になるのも分かるから…少しでも、こう…愛情を伝えられたらって」

「それは、分かってるの…」

 今朝の待ち合わせだって、バッグごと私を持ち上げて「あずちゃん、今日は重たいなぁ!」と笑っていた。

 「ひどーい」と文句を言えば「好きな人の重量が増えるのは良いことだよ、あはは!」とギュッと抱き締めてくれた。

 彼は私のことが好きだし、太ったとか痩せたとか関心はあっても固執しない。

 一番ぽっちゃりしていた時の私に恋をして、久々の再会なのに後ろ姿で私を認識したんだもの、私自身を好きなのは分かる。

「…うん、僕はあずちゃんが好きだよ」

「でもさ、もったいぶって、さかりが過ぎちゃうのはもったいないなー」

「…盛り?」

「うん、女盛りとか男盛りとかあるじゃない。人生で一番綺麗で体力がある時、みたいな」

 まだまだ私たちは若いから本当は危惧してないのだが、私は痩せた今が最も綺麗なのではないかと考えている。

 この先またリバウンドするかもしれないし、たぶんここらが私の骨格だと一番均整が取れた適正体重なのではないかと。

 何年後に遼平さんと結婚するかは分からないが、彼の仕事や覚悟などを加味するとだいぶん先なのではないかと予測できる。

 ならば早めに味見したら良いのに、なんて思い口添えしてみた。


「そうか…」

「まぁ、期待されても大した体をしてる訳じゃないんだけど」

「…一番…か…」

 おや山が動くのかな、しかし遼平さんは私の言葉の別のところに着目したようだった。

「確かに、20代の今が、一番体力があるのかもしれないな」

「うん?」

「いや、でも長く働くために、30、40になっても現場で動けるように鍛えている訳で」

「うん…?」

「後になって、あの時の体力ならここまで出来た、と悔やむのは確かに歯痒い気持ちになるな…」

「(エッチで、どれだけ体力を使う気なの)」


 話が進みそうだけど物々しい空気が漂い始める。

 もしかして、力任せな乱暴なことをしようとしているのか。
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