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2022
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しおりを挟む「…気になるとは」
「………」
「青木さん、前に私は聞きそびれたんです。気になるって、太ってて目に付くって意味ですか?」
「…っケホ…すみません、水を貰って来ます」
また中座、意気地なし。
いっそスッパリ斬ってくれれば良いのに、焦らす優しさは意地悪だ。
あの「気になってる」に甘い要素が加わるのか、それを教えて欲しいのに。
ケホケホ言いながら戻って来た青木さんの左手薬指に指輪は無い。
職業柄着けなかったりする人もいるだろうが彼はどうなんだろう。
「それで?」
「…コホン…太ってるとか、そういうのは問題じゃないんです。自分は…訓練中に署の前を舞岡さんが通るのが、なんて言うか楽しみで…その、た、タイプと言いますか、朗らかそうで、お若いですがしっかりとした体躯をしてらして」
「デブ専なんですか」
「否定はしませんが、そこは問題じゃなくて…話し掛けたいなと、ソワソワしてたんです。そこに面白がった先輩が持ち上げを指示しまして…自分にとって利もあったものですから、葛藤しながらも声を掛けさせて頂いた次第でして…」
「……」
正直、さっきからまぐろ丼の味がしない。
温度や食感は伝わってくるのに、脂が舌に絡むだけで旨味を感じない。
その代わり顔はじんじんするくらい熱くなって、噛む力が抜けてだらしなく口が開いてしまう。
「舞岡さん?」
「…っあ、はい、分かりました、事情は」
「ですので、ハラスメントがありつつも…私利私欲のためでもありまして、あの1年は…ご迷惑をお掛けしました」
「なるほど…そうですか…」
「自分は気が弱いものですから、若手と呼べない職歴になっても標的になりまして…ずるずると言いなりになってしまいました。舞岡さんにこうした説明をしたかったのですが、監視の目もありまして…訳が分からなかったと思います。本当に申し訳ございません」
「はいはい…」
あれ、ラブな展開が通り過ぎて行った。
話を聞いていればまた戻って来るだろうか。
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