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2022・初お泊まり
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しおりを挟む遼平さんとの交際が始まって1ヶ月なのだが、彼の熱烈な愛情表現に私は少し気後れしている。
と言うのも、彼はまず声が大きい。
待ち合わせ場所に現れると毎回「あずちゃん!」と大声で私の渾名を呼ぶ。
そして元気だったか、体調を崩してないか、きちんと食事をしているかを確認する。
職業柄なのだろうか、健康状態を気にかけて健やかに保とうとしてくれる。
さらに彼は動きも大きい。
もう癖になっているのか、私を持ち上げてその感触を確かめる。
そして「痩せたんじゃない?ちゃんと食べてる?」なんて聞き取りをする。
そこで「暑くなってきたから食欲が湧かなくて」などと言おうものなら…形相を変えて食事場へと連行される。
ボリュームのある料理を勝手に頼まれて超絶応援を受けて、苦笑いしながらそれを食べるという、運動部の合宿みたいなデートになる。
デートはお互いの休みの日か仕事終わりで、だいたい食事込みになる。
私を大切に思ってくれているのは分かるので止められないが、これってカップルがすることなのかなーなんて考えたりもした。
でも私が元気だと遼平さんも安心するし、しっかり食べていれば彼も幸せそうだ。
彼はデブ専ではないと自称していたけど、無意識なだけでその気もあるんだろうなぁと予想している。
ともあれ遼平さんの勢いに押されがち、な今日この頃だ。
ちなみに我々は立派な大人な訳だが、スキンシップは日々の抱っこと間接キスくらいである。
ピュア過ぎる、暫定童貞と処女カップルである。
さて、そんな私にもついに浮いた話のチャンスが訪れる。
遼平さんに泊まりがけの旅行に行こうと誘われたのだ。
これまで二人の休みがなかなか合わず、連休が揃わなかった。
遼平さんの勤務体系は日によって違うらしく、当番があって非番があって休みがあって日勤があって、と規則正しく順番が回ってくるそうだ。
当番は24時間勤務で、署の仮眠ベッドで一夜を過ごす。
その翌朝に交代して、その日が非番に当たるそうだ。
夜間に出動があれば当然徹夜になってしまうし、非番は基本フリーとはいえ眠たくて仕方ないらしい。
遼平さんは自宅のしっかりしたベッドで寝直して、午後からはジムに行って鍛えたりするのがお決まりの過ごし方なのだとか。
職員の少ない出張署に配属されていた時は非番でも緊急招集の可能性が高かったため、真面目な遼平さんは町を離れられなかったそうだ。
自宅で鍛えたり署の敷地内にトレーニング機器を置いたり、自宅及び職場付近に篭りがちだった。
今配属されている西署はまあまあの規模で、幸いにも人員は足りている。
なので遼平さんは比較的気楽に、ゆったりと余暇を楽しんだり出来るようになったみたいだ。
さて今回の旅行の行き先は県内の温泉地だ。
私はわくわくと衣類をバッグへ詰める。
初体験があるかな、遼平さんのことだから「こんな普通の旅館でそんなコトをしては悪いよ」なんて遠慮するだろうか。
それでも一緒に夜を過ごせる初めての日が楽しみで楽しみで、いつもより余計にスキンケアなどしてみる。
恋のパワーなのか、ここ最近はダイエットも捗ってLサイズが定着しつつある。
お腹や二の腕はタプタプしているが、以前よりは全体的にスッキリしたし何より体が軽い。
これは遼平さんのトレーニングメソッドを少し取り入れたのも大きいと思う。
彼とのデートは活動的なものが多いし、お日様の下を歩いたり自然に触れたりと心身共に満たされている。
手は繋いだ、肩も抱かれた。
雰囲気と舞台は整った…この旅行で何らかの発展を期待したい。
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