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2021
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しおりを挟む「体を触られたんですか?やだぁ」
「その辺はあんまり抵抗無くて…ね、でもその人がすごい済まなさそうにするから、私も協力してあげたくなっちゃって。1年くらいそういうのがあったかな」
「うへー」
「でも、その人は気付いたら居なくなっちゃってて…しばらく見てないんだ。あの署では、そういうイタズラみたいなハラスメントをさせてたってことで何人も辞めさせられたみたいよ、指示してやらせてた方がね。私以外にも、近隣の人が担がれたりしてたみたい。他にも、よくある…過剰に走らせたり、使いパシリにしたりしてたみたい」
「…それ、舞岡さんを持ち上げた消防士も辞めたってことですか?」
「んー…分かんないんだよね、しかもその人はやらされてた側だし。でも私が知らないところでは後輩をイジメてたのかもしれないね…分からないけど。秋に入った新人くんが、翌年の新人をイビってるのを見た時はゾッとしたね」
青木さんはどうして先輩に黙って従っていたんだろう。
絶対的な悪習に逆らえないものなのか。
人を虐めているとそれが当たり前になって、良心の呵責も感じなくなってしまうのだろうか。
「自分もされたので、後輩にもします」を打破できなかったのだろうか。
スポーツの強豪校のエピソードでその類の話は聞くけれど、「あのイビリのおかげで強くなりました」なんて事実は無いと思う。
走り込みのおかげで筋力が付いて試合に勝てた、とかはあると思うがやらされてる時は喜んでしていないはずだ。
あれは、「従うこと」に慣れさせて自我を喪失させ言いなり人間を生成することが目的なのだろう。
そして、一部の人は人を虐げた時に高揚感を覚える。
ましてやそこに「扱き」や「伝統」や「自分もされたから」なんて正当性を持たせるものだから何年経っても無くならない。
「体育会系にはよくあるんですかね…やだなぁ、そういうの」
「今は無いみたいだよ、少なくとも外から見る分には」
「…イジメとか、絶対無理なので…私も経験あるし…」
暗い顔の麻未ちゃんは視線を落とす。
嫌なことを思い出させてしまったのかな、先輩として申し訳ない。
「うん、嫌だよね…麻未ちゃんも、何か会社で嫌だと思うことがあったら専務とかに相談してね」
「まず舞岡さんに相談しますよ。もし舞岡さんに何かされたらその場で指摘します」
「…心強い」
私を脅威だとは思っていない、それが知れて嬉しかった。
もちろん可愛い後輩を虐めるつもりも無いし大切に育てていくつもりだけど、指導が行き過ぎてしまっても自分では気付かない場合がある。
直接でも遠回しにでも、教えてくれるならこちらも有り難い。
それぞれのコミュニティにそれぞれの人間模様があるんだよなぁ、ただのイジりで済んだり精神を病むまで追い詰められたり。
今日も青木さんがどこかで元気で働いてますように…表情を作り直して麻未ちゃんの後を追った。
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