街を歩いていると、見知らぬマッチョに体を担ぎたいとお願いされました。

茜琉ぴーたん

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2019

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 そうして日々が過ぎていく中で、段々と青木あおきさんと会う頻度が少なくなっていった。

 そもそも私のお使いが毎日行事ではないので、遭遇自体がレアではあるのだが。

 ひと月に1回くらい「持ち上げさせて下さい」とお願いされて、持ち上げられてお礼を言われて。

 会話をしようにも互いに勤務中で、彼はササっと署内へ戻ってしまう。

 思わせぶりな「気になってた」の真意と詳細も聞けていない。



 なんだか分からないうちに季節は巡り、入社4年目の春が到来した。

「桜ももう終わりだなー…」

 うちは今年も新入社員を取らなかったために、私が最年少下っ端のままである。

 なので用事やお使いは相変わらず私の仕事だ。


 本日も社屋から500メートルほど離れた銀行へお使いをして、戻る途中に消防署の前を通った。

「(青木さん、最近見ないな)」

 遠目にも識別できるくらいに青木さんのことは気にしていたのだが、春になって彼の姿をまだ見ていない。

 私が偶然会わない時間帯に動いているのか、夜勤ばかりになったのだろうか。

 単純に他の署に転勤、ということもあるだろうか。

 私を持ち上げていた理由くらいは知りたかった、「毎日見ていて気になっていた」をもっと掘り下げたかった。


 敷地内では数人の隊員が高い壁を登る訓練をしており、皆機敏に動いている。

 青木さんの姿を探す生活をしばらくしているな、出逢いのインパクトが強かったから意識はしてしまう。

「(その気にさせて、会えなくなっちゃうんだもんなー…ずるーい…)」

 それからも署の前を通る度に気にしていたが、青木さんは見つからなかった。
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