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2018

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「わっ」

「いきますよ、せーの、」

「わわわ」


 今さらだが、私はぽちゃ体型である。

 身長155に対して体重は65キロ、全体的に満遍なく肉が付いたワガママボディだ。

 会社の制服はXXLを着用しており、事務のドンである専務には「こんな大きい制服、発注したの初めてだわ」なんて嫌味を言われた。


 そんな私の体が、ぶわんと宙に舞う。

 地面から離れたのは十数センチだとは思うが、飛び上がったと感じるくらいには視点が高くなり新鮮な視界が広がった。

 コンビニの屋根の上に5月の快晴の空が見える。

 道路を走る車よりも高い視点、歩道の押し車のおばあちゃんがこちらを見上げていた。


「わー」

 眼下には、青木さんの弾けるような笑顔。

 私の顔をしっかりと見て、口は薄く開いて歯が覗いて。

 どうして、この人は重たい私を持ち上げながらこんなに笑えるのだろう。

 よく転んだりする時に景色がスローモーションになるとか聞くけれど、同じような現象が私にも起こっていた。

 人助けのつもりでOKしてしまったが、珍しい体験ができて良かったのかもしれない。


「すみません、もう終わるので」

「はい、い、」

 青木さんは私を優しく地面に降ろして、

「ご協力、ありがとうございました!」

と頭を下げて署の敷地内へ駆けて行く。

 ぽかんとしばし固まった私は、彼のオレンジのズボンが遠くなって行くのを見つめていた。

「何のお礼…?」



 その後、饅頭を会社で配ってこの出来事を話してみたのだが、専務に「重たいだろうに、訓練にしても何でわざわざ舞岡さんを選ぶかね」なんて失礼なことを言われてお終いだった。

 ちなみにこの専務は社長の奥さまなので、誰も苦言など呈さない。


 もしかして、市に苦情を入れた方が良いのだろうか。

 しかし青木さんの情けなさそうに済まなさそうに笑う顔、私の我慢で穏便に済むのなら黙っておこうかと思えた。

 引きながらもOKしたのは私の意思だったし。


 言葉とガタイのインパクトでぼんやりしていたが、見下ろした顔はそこそこイケメンだった。

 でも残念そうな眉と目と口が印象に残っている感じ、今度会うことがあれば話を聞いてみようかと思った。
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