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しおりを挟むそれから数日後、週末金曜日のこと。
「あ、真秋の彼ピじゃん、おかえりー」
仕事から帰ると、マンションの玄関前の植え込みに木南が座っていた。
彼ピって女子高生じゃあるまいし、でも訂正して雑談にもつれ込むのも嫌だった。
「…木南、さん」
「用事があって来てみたんだけどさ、真秋が留守みたいで。入れてくんない?仕事部屋で待たせてもらうから」
「いや、俺には判断できないんで」
真秋には「無視して良い」と言われている。
でも仕事の話なら俺がコイツの機嫌を損ねて真秋に影響したらまずいのか。
「んなこと言わないでさ、彼ピと真秋の愛の巣までは見ないから、中で待たせてよ~」
「…連絡してみます」
真秋に電話を掛けるも、繋がらない。
他の仕事をしているんなら、それも当然だ。
「ね、繋がらないっしょ?中に入れてよ~、てか、いれさせて、なんちゃって♡」
木南は立ち上がり、ずいと俺を見下ろす。
背は真秋と同じくらいか、緩いパーマの前髪が真秋のそれと雰囲気が似ていた。
「あの、仕事関係に俺は関わらないことになってるんで、判断できないんです。なので、すみません」
「ふーん、そぉ」
俺はじりじりと後ろ歩きでオートロックを解除する。
うちは集合キータイプで、暗証番号と違い盗み見られても問題ない。
そのまま開いたドアから中へと入り、木南から視線を離さずドアが閉まるのを見届けた。
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