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しおりを挟む「ごちそうさま」
皿と弁当箱を自分で洗う。
怒ってないと言うなら信じよう、イライラは胃が満ちると共に消化されていった。
やれやれ、それにしても穏便に済ませたいのに会話が背中越しでは通じ合えない。
彼女がこちらを向いてくれるのを気長に待つか、それとも寝室で俺の姿が見えなければ態度が軟化するだろうか。
下手に出て機嫌を窺うしかないのか、そしてほとぼりが冷めた後日に詳細を聞き出すか。
「(めんど)」
明日は休みだし、夜通し懇々と議論しても問題ない。
ふぅとため息をついて風呂場へ行くと見せかけて、
「有紀、」
と彼女の顔を後ろから両手で掴んだ。
「きゃっ」
「有紀、ちゃんと話し合お、こっち向け」
「痛い、曲がんない」
そりゃそうか、俺は手を緩めてソファーの背を乗り越え隣へ座る。
「こっち見ろ」
「やだ、」
「くすぐるぞ」
「やだって…」
まるで獅子舞みたいに、彼女は頭をぶんぶん振っては俺の視界に留まってくれない。
声は情けないくらい弱々しくて、でも泣きそうとは違う気もする。
「無視するだけじゃ解決しねえって、小さいことでも良いから言えよ」
「やだ、見ないで」
「ん?」
俺を見たくないのではない、見て欲しくないらしい。
なら余計に見たくなるな、フェイスラインをがしっと捕まえたらついに獅子舞は動けなくなった。
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