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10(最終話)
しおりを挟む月曜日、彼女の前髪は変わり映えしていなかった。
鏡の前でちねちねといじっては、恥ずかしがったり納得したりする彼女が微笑ましい。
「ちっとは伸びた?」
「どうだろ…元々、伸びるの遅い方なんだよねー…」
「ヘアバンドは?」
「カチューシャね。うちは装飾品、ダメなんだよね…しょうがない、」
結局、彼女は毛束をいくらかヘアピンで横へ流して重さを減らした。
隙間から肌色が覗けば、ぱっつん感が割と軽減できるみたいだ。
俺にはよく分からないが、目蓋の化粧も変えたらしい。
いつもより立体感を出して、腫れぼったさを目立たなくしたそうだ。
「程よくなれば良いな」
「うん…もう自分では切らない」
「それが良いね…じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
俺の背中に挨拶を投げて、彼女はまた鏡との睨めっこを再開したようだ。
職場での感触はどうなんだろう、同僚からのリアクションはどうなんだろう。
もじもじしながら歩くんだろうか、伏目がちに話すのだろうか。
「(恥ずかしがる有紀、もっと見てぇなー)」
帰ってからの報告を聞いて、場合によっては慰めてあげよう。
でも「案外平気だった」なんて順応してるんだろうな、そんなサラッとした有紀が俺は好きなんだ。
早く夜にならないかな、俺は元気に動き出した。
おわり
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