今宵も、麗しのボスとパーティーを。

茜琉ぴーたん

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6月

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「……今も腹の底ではそう思ってる?」

「んー?ふふっ…そんなには。年取って丸くなったしさ、母性みたいなもので大抵のことは許せちゃう…よしよし、って感じ」

「1歳しか違わないよ、ナナさん」

「うん、だって…教える・教えられるの関係だから…」

「もうほぼ習得した…あとは応用かな」

飲んだ水が胃で落ち着いたのを感じてから奈々の隣へ横になり、松井は肉圧の高い乳房に手を付けてその感触を愉しむ。

「うん…まだ経験値は私の方が上だけどね」

「さっきまで童貞だった僕に張り合わないでよ……ん、そうだ、ごめんなさい、不勉強で申し訳ないんですけど、そのー…いわゆる中出し、して良かったんですか?今更ですけど」

 おそらく松井の体液はまだ奈々のはらにしがみついていることだろう。

 本人がOKを出してくれたからそうしたが…それが浮いた頭での狂った判断ならば信用できないし、あれだけ連続で膣内射精してしまっては妊娠の可能性は全くのゼロではないと思うのだ。


「大丈夫よ…リング…分かるかな、避妊リングってやつ入れてるの」

「ひにんりんぐ、」

 松井は脱ぎ落としたジーンズのポケットからスマートフォンを探し当て、『避妊リング』をインターネット検索にかける。


「……………へ、体に、へ、」

「…婦人科でね、してもらうの」

 概要を読んだ男は頭の中で体内の位置関係を整理して、

「え、痛くなかったですか?」

と奈々の胎の心配をした。

「ふふっ、大丈夫。そこにも書いてあったでしょう?着床を防ぐとか色々…ピルは知ってる?」

「飲むやつですよね」

「そう、これなら飲み忘れる心配もないしね…生理痛も緩和されたし、メリットあるのよ」

「…へぇ…」

まるきり未知の世界、松井は不思議な気持ちでレディースクリニックが監修する文言を読み込む。


「…昔のカレが避妊に無頓着というかぞんざいな人でね、自分の身を守るためにね、入れたの」

「そんな人と付き合わなくても」

「体の相性は良かったのよ…まぁ別れたわけだけど……危機管理ね。恋愛はしたいけど…私、もう子供産みたくないから」

「え、」

母性溢れる奈々にミスマッチな「産みたくない」という言葉は松井の心にグサッと刺さり、にわかにぼんやりとした将来像に暗雲が掛かった。

 そうか奈々はもう産む気が無い、それは再婚したとしても子供は望まないということか。

 それとももう再婚自体したくないということか。

 だとすればこの関係は恋人ごっこなのか、一時的な愉悦のためのものなのか。


「ナナさん、もし、僕が結婚しようって言ったら?」

「…………ふふ、したいのォ?」


 眉尻を下げて困った顔をした奈々はそれでも美しくて…動揺を悟られたくない松井は

「今は考えてません」

と答えて体を離す。





 二人はそのまま眠り朝を迎え、早番の奈々は

「支度して出るわね、またね♡」

と自分の部屋へと帰って行った。


 遅番の松井は見送ってからベッドへ戻り、奈々の動線に沿って家鳴りする天井をボーッと見つめてため息を吐く。

「…結婚とか…無いのか、」

 漠然と恋愛がしたくて念願叶って、セックスもしてみてではその先…家庭を作る、親もその親も当たり前にしてきた子孫を残すという行為、奈々はそれを望んでいないらしい。

 自分も奈々を通り過ぎて行った彼氏の1人として墓標に名を刻むのか。

 どうも温度差があるみたいだ、松井は初めてのディープな恋わずらいに歯痛を催した。
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