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5月
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しおりを挟む「はー、いいお湯だった♡もう少し食べようかな、」
ほかほかの湯気を上げて、持参したパジャマ姿の奈々が風呂場から帰ってくる。
前開きのボタンタイプのいわゆる普通のシャツタイプのパジャマ、その胸元は明らかに張り詰めていて…奈々の恵体を収めるには力不足のようである。
「…お酒はもうやめて下さいね」
「うん、旭くんの寝込みを襲っちゃうと困るもんね、」
「はぁ、うーん…まだ言います?」
酔ってなくてもちょいちょい放たれるエロいワード、それはただの下ネタなのか誘っているのか松井には意図が読み切れない。
エッチな展開は見る分には楽しいが参加するのはまた別の話で、胸の触り方しか予習ができていない童貞には荷が重すぎた。
「ちょっとくらい期待しちゃうじゃない、お泊まりなんだもん」
「手は出しません、いや…出せません、情けないですけど…まだ免疫が足りない」
「人をウイルスみたいに…」
奈々は意地悪そうな顔をして、クッションに腰を下ろして食卓にあるおかずに手を伸ばす。
「とりあえず、僕もお風呂入ってきます」
「はーい、いてらー」
「呑んじゃダメですよ」
風呂に行く動線で、松井は酒瓶を回収してキッチンカウンターへと戻した。
「いい匂いがした…僕のシャンプー…はー…手ぇ出さないと失礼なのか…?レベルが高いって…」
シャワーで頭を打たれながら、松井はぼそぼそと想いを吐露した。
松井は性行為においてはまだひよっ子どころか卵状態、対して相手は経験値もなかなかのラスボスレベルの大物である。
今夜のお泊りを提案したのは奈々で、翌日が休みだからゆっくりできると申し出られたものだった。
「休まらない…はー…すぐ勃起しちゃう…あー…」
添い寝から、いっそ彼女から跨って奪ってくれたらどんなに楽か…松井はそんなことを想像するだけでも体が軽率に反応する童貞である。
しかし彼が望むカップルの形は女性をリードする典型的な男性上位型…奈々に惚れた時点でそんなものは泡となって消えているのだが、まだ希望を捨てきれずにいた。
「キスはできる……できる…でも素面ならどうなんだろ……むずい…うー…」
せめて一緒に学んでいければいいのに…プライドの高い松井は、仕事でもプライベートでも自分が『教えられる立場』にいることにストレスを感じている。
・
「あがりましたー…」
「ん、おおかた片付けたんだけど…残りは容器に入れちゃった」
松井が台所へ戻ると食べ散らかしていたおかずがそれぞれ綺麗に保存容器へ収められて、皿はシンクへ浸かっていた。
「いいのに…危ないなー…まだ酔ってるでしょう」
「大丈夫よ、洗い物は?私していい?」
「いえ、うちのは自分でしますよ…」
すっかり酔いの覚めた松井はパジャマの袖をまくってシリコンのスクレイパーを手に取る。
ソースや油汚れをこれで落としておくと洗い物が楽だし環境にも優しいのだ。
「そう…ね、ほんと…敬語、やめない?距離感じちゃう」
「んー、」
「仕事の話の時は仕方ないわよ、でも…」
カウンターキッチンのリビング側から作業を覗き込み、しゅんとした奈々はすっぴんであどけなく見える。
「参ったな…」
「私以外の女の子にはタメ口きくじゃない、私もそんなのでいいのに」
「ナナさんは別格だよ…元々が上司なんだから」
「じゃあ、呼び捨てにして。私、無意味に威張られるのって嫌いだけど、彼氏にはある程度は男らしさ持ってて欲しいの」
「えー…」
「実力行使するわよ」
奈々はシンク側へと回り込み、両手が塞がった松井の背中にたわわを押し付けた。
グッと押せば柔らかい弾力が松井へ貼り付き、むずむずと興奮が足先から脳天へ駆け抜けていく。
「あ♡やめ、あ、」
「ね、ナナって…呼んでよ、」
「ナ、ナ、」
「ちゃんと…」
後ろ頭に付くのは彼女の唇、奈々は松井の腰へ手を回してぎゅうと抱き締めた。
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