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5月

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 その後はそれぞれで好きに過ごし、松井は近くのスーパーへ夕飯の買い出しに出るなどして夕方に彼の部屋で共に食事をした。

 落ち着いたら一緒にジムへ向かい、奈々はトレーナーと打ち合わせをしてとりあえず胸筋を鍛えて将来的な胸の垂れを予防するような…そんなメニューを組んでもらう。

 松井はその様子を近くで眺めながら、改めて彼女の体を持て余していることを歯痒く思った。

「(デカい…背も、胸も、脚も長いしムチムチ…)」

 体型にフィットした上のウェアと緩い足首までのパンツ、今はそんなものだが慣れてくれば彼女は腹を出したりピタッとしたラッシュガードなどを着るだろうか。

 そうなればいよいよ松井の手に負えない。

 今日この時でさえ新顔ということで常連の視線が注がれているのに、器具を使ってトレーニングを始めればウェアのシワさえも艶かしく…男性陣はついつい目を奪われてしまうのだ。


 奈々は軽く準備運動をしてからチェストプレスやバタフライマシンなど胸と肩を重点的に攻め始める。

 力を入れて「ふん」と押し出したり腕を曲げたり、確かに締め付けられた胸は派手に揺れはしないが、呼吸は苦しくないだろうかとハラハラしながら松井はエアロバイクを漕ぎ続けた。


「ふー…疲れたァ……旭くん、それ楽しい?」

「楽しいですよ、ランニングマシンより僕は好きです」

 このフィットネスジムは建物の2階にあり、ガラス張りの窓際にランニングマシンがずらと並べられていて隣のモールの利用者から丸見えになっている。

 空の様子や人の行き来を眺めるのは飽きなくて面白いが見世物のようで恥ずかしい、まだそれほど体に自信の無い松井は1列奥まったこのエアロバイクがお気に入りなのだ。

「もう自由にしていいって言われたの。私もやってみようっと…旭くんは、トレーナーさん付けてないの?」

「最初は付いてもらいましたよ。使い方とか分からないし…ひと通り覚えたらあとは好きにさせてもらってます。僕は筋肉というより全体的に絞りたかったので」

「知らないこと始めるの、勇気要ったでしょ」

ゆっくりペダルを踏みながら、奈々は横目で松井を窺った。

「そう…ですね、だから同僚と一緒に始めました…いかにも『付き添いです』みたいな雰囲気で斜に構えて……今考えるとダサいですね…」

「それを思い返してそう思えるのが進歩じゃない…成長よ、一緒にマッチョ目指しましょ♡」

「ナナさんはマッチョになりたいの?」

「違うけど…でも胸筋とか肩とか鍛えると、肩凝りも解消できるって…立ち仕事だと何かしら体のメンテナンスしとかなきゃ…ふぅ、汗かくの気持ちいいわね、」

「はい、」

 それから数種類のマシンを試して体をいじめ、シャワーを借りてクールダウンする。


 休日前の会社帰りに来るのも開放感があって爽快だが、ここを出て奈々が待っていてくれると思うと…この上なく松井の筋トレへのモチベーションは上がるのだった。
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