25 / 79
4月
25
しおりを挟む「今の管理職は…平均年齢は下がってきてるかしら?店長より副店長の方が年上よね、年功序列は崩れてきてる」
「ですね、僕は正直…副店長は感性が合わないので積極的には関わらないようにしてます」
「あら、松井くんでも苦手なタイプっているんだ、意外」
他地域から先々月赴任してきた副店長・石柄は50代オラオラ系の体育会系で、時代錯誤な精神論や根性論などを振りかざす面倒なタイプである。
「メリットがあれば慕いますけど…ああいう人は媚びる奴を重用するでしょ、僕はそんなのはできません」
「そうねェ…昔気質の…パワハラ・セクハラ当たり前な人種よね…」
「え、フロア長、何かされたんですかっ⁉︎」
ポロっと溢れた奈々の言葉に反応して松井は膝を立て、つい声を荒げてしまった。
「大丈夫よ、座って………『女は出世が楽だな』とか『肩揉んでやろうか、凝るだろ』とか言われただけよ、慣れてる」
「そんなの慣れることじゃないでしょう、それ…立派なセクハラですよ、本社に通報しましょうよ」
「いいのよ、証拠もないし…触られたわけでもないからね、ふふ、怒ってくれてありがとう♡」
ふぅ、とため息を吐いた奈々は食前に出してもらったオレンジティーをスプーンでクルリと混ぜて、飲まずにテーブルを見つめる。
「悪意があるじゃないですか…嫌だなぁ…次、何かあったら絶対に意思表示して下さい、つけ上がらせちゃダメです」
「うん、もちろん……うん」
「ふ、フロア長だけじゃない、女子スタッフ全体に関わることだから…本当…」
「優しいのね、ありがとう」
奈々はニッコリと微笑んで、水の層が浮いたオレンジティーにようやく口を付けた。
それは誠に本心からの言葉で、心配してくれた事と、照れて誤魔化すその動揺ぶりに愛しさを感じてしまったからだった。
「過剰に反応するのはダメですけど、されたり言われたりしたことはちゃんと…」
「分かったってば♡ねェ、松井くん…管理職になって世直ししちゃえばいいのに。登用試験って随時やってるわよ?」
「んーー……」
新しい挑戦、自信も実績も充分だがなにぶん彼は人から不条理な指図を受けるのが嫌いなのである。
販売担当ならば中間管理職の下で好きに動けるが、その管理職になれば更に上の「本社」という組織からの圧力と指図を受けねばならない。
入社した時から経営理念や実践要綱などは何度も暗唱させられてきたが、松井はその度に「これに何の意味があるのか?」と疑問を持っていた。
「やっぱりプライドが邪魔してる?松井くんって、ゲームとかで負けても『参りました』って言えないタイプ?」
「んー、勝てる勝負しかしないタイプです」
「あらヘタれね…知識も実技も自信あるでしょう?現場が好きなのは分かるけど、松井くんはブレーンとして店を回すの向いてると思うの」
「は、い…」
「小規模店なら管理職でも売り場に立つし…そういう道もあるわ、……貴方みたいな人が上に立ってくれると、女性は働きやすいと思うわよ」
女性というだけで第一線から外される人も見てきた、奈々は客観的な意見として松井へ伝える。
「考えておきます」
「その時はマウントは取らないほうがいいわね、ふふ」
「心掛けます」
松井はバツが悪そうにビールを呑み干した。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる