今宵も、麗しのボスとパーティーを。

茜琉ぴーたん

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7月(最終章)

75(最終話)

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「巡店してきた本社の人と私も簡単に話したんだけど…女性管理職を増やそうって取り組んでるけど、実際どこまで登り詰めたいかっていう…実際ね、私の年齢だとまだ妊娠出産の可能性があるからって、すぐに副店長とかには推さないらしいのよ。責任を伴うから時短とか難しいし…会社的には女性管理職かつ産休・育休取得実績も積ませたいんじゃないかしらって…邪推じゃすいしちゃうわね…もちろんありがたいことなんだけどね、だったら…早い方がいいのかなって」

「なるほど」

「旭くんが覚悟してくれてるんだもの…私も応えなきゃ…ご実家にもご挨拶に行きたいわ」

「あ、うちの両親、既にナナさんの接客受けてるらしいんですよ」

「えェ……やだ、仕事モードだときっと高飛車な女だって思われてるわ」

「そんなことない…『しっかりした人だね』って言ってました」

 松井の性格を知る両親は強そうな奈々を見て「この方なら旭をぎょせる」と太鼓判を押したらしい。

 ちなみにだが松井両親は築年数の経つ実家を手放して住みやすい賃貸での老後を考えているらしく、特に跡取りなどは求めていないそうだ。


「そう……あ、旭くん、敬語になってるわよ」

「あ、本当…だ、」

「もうフロア長同士だから対等ね」

「うん…そうか…」

「私が勝ってるのは年齢と身長くらいね」

「…でもナチュラルにうやまっちゃうんだよなぁ」

お気に入りメニューのグラタンを予熱していたオーブンレンジへセットして、松井が振り返り目配せをすればその視界は麗しいパートナーで満たされる。

 奈々はついばむ浅いキスで仕置きのようにおあずけを喰らわせて、やっぱり上から松井を翻弄ほんろうした。

「ん♡……旭くん、40歳までに妊娠しなかったら、またピルとかで避妊するけどいいかしら?」

「もちろん、計画的にね」

「ありがと、元気なアラフォーになって…もし子供ができなくてもね、体が動くうちはラブラブしましょ」

「うん、鍛えとかなきゃね」

「ふふっ………うん、今夜はプチパーティーね、それっぽいものも作りましょうか」

「あ、ならこの前のハムが」

「いいわね♡」


 身長差のある二人は今宵も仲良く台所に並んで立ち、あれやこれやと笑って話しては愛情を込めた料理を作って互いをもてなす。

「これをね、こう…そう、上手ね♡」

「ナナさんの教え方が上手いんだよ」

 知らないことは教えてと真摯しんしに請い、優れているところは素直に褒めて、私生活での松井の態度は仕事にも好影響を与えている。


「旭くん、その味見した指をシャツで拭く癖、やめない?」

「えー?別にいいでしょ」

「もゥ、子供が真似しちゃ困るでしょう?大人は見本にならなきゃ」

「はーい……ナナさんのそのお母さんっぽいところ、僕好きだな」

「…そうでもないけどォ…世帯主としてェ…」

「うん、その時は自覚持つようにするよ。今はまだナナさんの手下でいいや」

「人を悪の組織の首領ボスみたいに言わないでちょうだい」

「まぁいいじゃない、揃ったよ、ほら……うるわしのボスに乾杯、」

「……二人の将来に…乾杯」


 この夜呑んだスパークリングワインの味は格別で…二人は何度もグラスを合わせて、幸福な未来への門出を祝い合った。



おしまい

*『私達は、若くて清い』に後日談あります。





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