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5月

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 数日後、仕事終わりの夜。

 この日も仲良くジムへ寄り、相変わらず主張の強い顔と体を遠目に見守りながら松井は満を辞しての意気込みを抱きながら汗をかく。

「松井さん、筋力上がってますね、いい感じですよ」

トレーナーに褒められれば流し目でニヒルに笑い、内心「よっしゃ」と喜びながら普段より多めに腹筋をいじめた。

「(カッコいい体に…なってるかな、ナナさんと並んでも…身長が低くても見栄えがするような…)」

ガラスに映るのは細マッチョに仕上がりつつある体、しかしてその天辺の顔は実に不安を絵に描いたような様相である。

「(帰り際…かな)」

彼はこの後の自宅での食事の後、ついに奈々の体に触れるという一大ミッションを計画していた。

 松井は取り繕ったり嘘をついたりと自分の弱みを隠したりするのは得意だ。

 しかし彼の性格をよく知る者からすればその虚勢は見え見えで…きっとそわそわし出せば奈々も不審に思うだろうことは間違いない。

 先月の1件では感情を隠せていなかった自分に驚いた。

 けれど奈々と親しくなって弱い自分を見直すようになり、無意識だった話の癖やマウントの改善に努めているのだ。

 彼女は自分の頑張りを受け止めてくれるだろうか、文字通り『胸を借りる』…そこまで考えた松井は「親父ギャグみたいだな」と我に返り、汗に濡れた頭を掻いた。





 トレーニング後は奈々とそれぞれの車でアパートへ帰り、松井の部屋であっさり目の夕飯を食べることにする。

「美味しい…これ何かしら?」

こうじです、使い切りの…万能ですね」

「へェ、いいわね……うん、美味しい」

「恐れ入ります」

 座卓を囲む二人は和やかで、仕事やジムの話に花を咲かせては笑い合った。

 食べ終わりが近付けば松井は緊張で体が強張り、その手から二度も箸を落として奈々に不思議そうな眼差しを向けられる。

 きっと悟られてる、そう思ったが彼の決意は揺るがなかったし、そろそろヘタレを返上しなければ松井の持って生まれたプライドがストレスに腐食されてその心身を留められそうにない。


「ごちそうさまァ…片付けるわ」

「いいですよ、つけ置きしたいし、自分でやります」

「そう?…じゃ、明日早番だから帰るわね…おやすみのキスしましょ」

「ん、ん♡」

「ふふっ♡お疲れ様…」

「はい…………ナナさん、そこまでですけど送ります」

「ありがとォ……じゃあね、…」

 キスをして送り出し、隣の扉を開けて玄関を入る奈々を見送ったと思いきや、背後から静かに追って忍び込んだ松井はパンプスを履いた彼女をバックハグした。


「…!旭くん…ビックリしたわ…」

「ちゃんと後ろ見て閉めなきゃ危ない…暴漢が入ってきますよ」

「う、ん…気をつけるわ…なァに、さっきまで大人しかったのに…」

「うん…決意が固まって……緊張する…」

「決意?……あ、」

 前に回した松井の手は奈々のたわわな胸の上へ、やや緊張気味にすりすりと動かせば乾いていた肌がもう一度汗ばんでくる。

 ジムで着けていた押さえ込むブラジャーはシャワーの際に取り替えたのだろう、今彼女の乳房を守っているのはそのサイズ相応の普段使いのものだった。

「ナナさん……やっぱ固めてもダメ…今日もめっちゃ目立ってた…はァ…ナナさん、触っていいですか?直に、見たい」

「え、うん…やだ突然なのね……え、ここ階段で?」

「はい」

薄い絨毯生地で覆われた内階段、松井は靴をぽいぽいと脱ぎ捨てて奈々を3段目に掛けさせ、ひざまずきその豊かな胸に顔を埋める。

「待って、外す…」

「自分でできます」

「えぇ、え?」

 松井は対面した奈々の背中へ両手を回し、ちょいちょいと服の上から触って3段ホックを器用に外してみせた。

 そしてひと呼吸おいて彼女のポロシャツをブラジャーと一緒にめくり、

「理屈を知っちゃえばなんて事ないです…すみません、失礼します、」

と大きな肉塊と初顔合わせをする。

「……恥ずかしい」

「ナナさん……キレイ、」

 その大きさもさることながら松井が褒めたのはそのフォルム…丸くて柔らかそうで、乳頭がぴんと水平に持ち上がっていた。

 オレンジ色の電球に照らされた奈々の体は陰影がくっきりと出ていて、松井はふと中学美術の授業で習った『球への陰影の付け方』を思い出す。
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