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4月
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しおりを挟む翌々日。
シフト通り出勤した松井が店長から聞かされたのは、副店長のハラスメントによる降格と転勤の話であった。
日々溜め込んでいたセクハラ・パワハラの実態を、あの騒ぎのすぐ後…実際にはほぼリアルタイムで本社へ内部通報した者がいたというのだ。
石柄が奈々を脅すところや部下を詰る詳細な実況、そして売り場で暴れる奴の鮮明な動画もメールで送りつけられていたのだという。
「就任当時から気になる点はあったんだけど…僕がいると大人しいだろ?尻尾が掴めなくてね…おとり捜査なんてさせられないし…彼はパワハラの前科があるからツーアウト、セクハラもあってスリーアウトだ。もう管理職には上がれない。悪かったね…歓送迎会の件も、そんないかがわしい感じにさせてるとは知らず…みっともないね、すまなかった」
「いえ…店長が謝ることでは…」
さすがの松井も今の店長のことは尊敬しているので、逆に済まない気持ちで彼の頭が上がるのを待った。
「それでね…うん、松井くんの処分なんだけど…」
「はい…」
「北店へ転勤、ってことで」
「え…近…」
「うん、良かったね。……そこで、コーナー長から始めなさい、規模は小さいがその分じっくり売り場も把握できるだろう。ゆくゆくはフロア長とか…管理職になってもらいたいからね、はは」
北店は市内の中規模店舗で、本店から車で20分ほどの郊外にあり、松井の自宅アパートからも10分もかからない近場である。
在庫数や品数に差はあるものの、知った顔もいるし配送エリアも同じなので今とそう変わらない環境で仕事ができそうだ。
「いいんですか?売り場で暴れたのに…」
「暴れたのは石柄くんだろ、松井くんは不問だよ。人事評価は北店の方で受けるようになるかな、時期的に…急だけど、来月頭から異動ね」
「はや…え、じゃあ新人たちの歓送迎会はできます?」
「うん、予定通り開催ね。でも松井くんの歓送会にもなっちゃったな、ははは…コーナー長は小笠原フロア長の推薦だよ、ペナルティみたいな異動だけど、実質栄転かな。…しっかり大きくなって…また本店に帰ってきなさい、ね」
店長は各種書類を渡し、転勤までの1週間を消化しきれてない有給休暇にて休日としてくれた。
松井はそれまでにやり残した業務や入荷待ち商品の確保など、諸々の庶務を片付けていくことになる。
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