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3月

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 中旬、とある平日。

『♪』

「ん……あ、フロア長………ふふ、可愛い」

自宅で休日を満喫する松井に送られてきたのは奈々と彼女のすっぴんによく似た娘のツーショット写真、彼は思わず微笑んでしまう。

 はち切れそうなブラウスをジャケットで押さえ込んだフォーマルスーツの奈々はいつもより柔らかい印象のメイクにしている気がする。

 眉毛の形やリップカラー、母親の顔つきをした上司がそこにいる。


 松井が

『可愛らしいですね』

と返信すれば、

『私に似てるでしょう?美人になるわよ』

と返ってきた。

「………フロア長に言ったつもりだったんだけど…失敗したな」

 さすがに10代の女子と母親ならばその言葉は若い方に向けられたと思うのが当然だろう。

 慣れないことはするものじゃないな、と松井は返事に悩む。

 なので

『フロア長がお綺麗だと言いたかったんです』

と送ってみると、

『褒めても何も出ないわよ。お土産くらいなら買って帰るけどね』

と返ってきた。


「お土産か…うん…嬉しいな…」


『お帰りを楽しみにしてます』

松井はそう送って、静かなひとりの午後を過ごす。

 まるで奈々の夫の様、いかんいかんと自戒しながらも、ちょろい彼は彼女への想いを『上司以上・恋愛未満』くらいに深めていくのだった。



つづく
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