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12月
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しおりを挟む「進学で関西に出てきた時にはビックリしたわぁ、本当に都会で…買い物するお店もいっぱいあって…みんなシュッとしてるしね、ふふ」
「そん頃に出逢っときゃ、さっさと俺が処女貰うてたかもしれへんな」
「ばか」
車内には乗客は少なかったが、高石の不埒な発言を制止した美月の目はまぁまぁ厳しかった。
「昔のことはいいの。これからなの!」
「せやね」
「昼間っからやらしい話しないでちょうだい」
「せやね」
ぷりぷりと怒りながらおむすびを頬張る彼女が可愛くて、その唇に付いた米粒を摘んで自身の口へ運び、高石は遂に懸案を切り出す。
「ミーちゃん、今夜な……、……?」
慎んで耳元で喋り始めた高石の吐息に美月は肩を上げて構え、その内容を理解すれば次第に頬が染まって目が泳ぐ。
「あ…あの…」
「体調は?」
「あ、大丈夫…その…大丈夫な…日…」
「うん、……実際な、どう?そういうつもりで来てる?」
小声でごにょごにょと話せば美月はエロティックにびくんと反応して、それだけでも高石には思いがけないご褒美にはなった。
「心の、準備は…できてない…けど……、そう…なっても、いいって…思ってる…」
「できてへんなら…あかんな」
ならば最後までは出来ない、高石は今夜も生殺しに耐えることになる。
彼は普通の喋り声に戻り、背もたれへ肩をつけて仰け反る。
「いやな、急かすわけちゃうねんけどな、隣に寝てて…結構…辛抱してるってのは…分かって欲しいのよ。もうひと部屋取ろかな…」
自分が最低な事を言っているのも分かっている。
これではまるで…お泊りを拒否したからと彼女を振った、前の男と同じではないか。
「せんならせんって…その…ブレーキ掛けとかな…最後までいってまうよ…」
サイズを測らせた結果のスキンはとうに届いて、宛名が書かれた包みのままふた月が経過、今日は高石のカバンの中に収まっている。
「半端に興奮して…暴走したらな、その…嫌な思い出になってまうやんか…しやったら最初から…諦めとかな…しんどいねん…ごめん」
元々の交際の動機にセックスが絡んでいるのだ、泊まりの旅行であれば高石とて期待してしまう。
「ちゃうのよ、ミーちゃんのタイミングで、なんやけどな、それが…この旅行なんかどうかが知りたいのよ」
「………」
美月は俯き、高石が初めて見るような哀しげな目で顔を上げ、
「もしあたしが泣いたら、やめてくれる?」
と訊いた。
「そら…やめるよ…」
「じゃあ…シて…」
化粧をした顔は血色良く、何もしてない耳も首までも赤みが差して。
美月は高石の耳元でそう囁いた後、ちゅっと耳たぶへ唇を付けてリップ音を聴かせる。
「…今夜か、明日の夜やな、どっちがええ?」
「どっちでも…あの、夜まで…他のことが落ち着かないから、忘れててくれる?温泉も楽しみたいの」
「無理やん、超絶ワクワクしてるよ」
高石は首と手首をコキと鳴らしてキスをした。
「も…やだ…ばか」
「大人やのにな、学生カップルみたいな初々しさや」
「ふん……ふふっ」
バスはあと10分程で宿泊先の旅館前に到着する。
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