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11月

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 11月某日、ドライブ前夜。

「ねぇタカちゃん、まだ怒ってる?」

「怒ってへんよ…落胆してんねや」

仕事終わりに寄った美月の部屋で、高石はソファーに踏ん反り返って彼女を睨む。

「ごめんって…チカちゃんの事が気になっちゃうんだもん…友達なの…」

「そら分かってるよ、俺かて千早は友達よ、けどミーちゃんとの休みを潰してまでアイツの顔見たないねん…俺はミーちゃんとまったりデートしたいねん…」

高石は項垂うなだれて拳で膝を打って悔しさを表現してみたが、あまり効果は無かった。

「こうやって度々夜におうちデートはしてるじゃない、タカちゃん…ドライブ、あたしも行きたいの…タカちゃんと…」

「ずっこい…すぐ泣き落としや…これやから顔のええ女はあかんねん…苦労を知らへん…」

 美人の潤んだ瞳、高石もこれには弱いが明らかに打算で操作した涙には簡単にほだされはしない。

 しかし、

「嫌なら、あたしひとりで行くわ。タカちゃん留守番ね」

とサラリと言い捨てられれば、慌てて

「なんでや、行く、行くよ」

すがるのだった。

「素直に最初から一緒に行きたいって言えばいいのにぃ♡」

「あー……腹立つなぁ…これやから美人は…」

 やはり基本の立場は美月が上、悔しいがそれは変えられないし自ら望む形なので文句も言えない高石である。


「あ、タカちゃん、明日着て行く服、見てくれない?」

「ええけど…変わった服はやめてや、千早にも見られんねんから」

 普段の服装はきれい目カジュアルの美月、冬だし過度な露出はしないだろうが、鎖骨や肩首は簡単に見せてしまうので油断できない。

「そんな変な格好しないわよ…タカちゃんはどうせ面白い柄のシャツと上着にジーパンでしょ?ペアルックまでしなくても、何か合わせられればカッコいいわよね」

「ほんまのペアルック買うてもええで?しましまとかチェックとかなら」

「ほんのり似てる、くらいが丁度いいわよ♡ね、明日、何着て行くのか見せてよ」

「んー、待ってね…」


 高石はカバンを漁って私服を取り出す。

 座した可愛らしいテディベアが自身の頭を持ち上げている、それが何色も何体も並んだ…ミツキの予想通り面白いプリントTシャツだった。

「シュールね…上着は?」

「普通の…これ、革ジャンよ」

「あら素敵…クマちゃんは可愛いけど、合わせようがないわね…」

「あんま考えんと、ミーちゃんが好きな服を着たらええよ。どうせ可愛いんやから」

予備のシャツも出そうとしたが同じ柄の色違いだったため手を掛けただけで美月に見せず、高石は少し中を整理してから出した服を仕舞う。

「タカちゃん、あんまり言い過ぎると一回あたりの言葉の重みが減っちゃわない?」

「んなことあれへんよ、可愛い可愛い可愛い…むしろ言うたびにミーちゃんの可愛さが増してるやんか」

 その言い分に呆気にとられた美月は吹き出し、

「ふふ…あたしたちって馬鹿ね♡」

と笑えば高石も

「ね」

と彼女の仕草を真似て小首を傾げた。

「ふー…ええ時間やな、ミーちゃん。風呂入ろ、んでおっぱいやな」

「風呂上りの牛乳みたいに言わないでちょうだいよ…ちょ、待って、」

リビングで高石は早々に服を脱ぎ出したため、美月は慌てて目を逸らし壁を向く。

「もー、タカちゃんのえっち」

「えっちやで、ぼちぼち俺の裸にも慣れてくれな困るよ…な、俺の胸も見る?下はまだ履いてるから、ちょいと見てよ」

「胸って…まぁそれくらいなら…」

 水着の高石は見たことがある。

 なんて事ないと振り返った美月の顔の先には、以前より格段に鍛えて締まった男の体があった。

「どう、風呂でもはっきり見てくれんから…しっかり見てよ。特にここ、最近は腹よ…きっちり割れてきてん、ミーちゃんのご飯が増えたからやろか?」

「そんなビルダーのご飯みたいなの作ってない……あ、凄いのね…前より…大きくなってる」

「せやろ、ミーちゃんを守れるようにね、…いや、ミーちゃんに体育会系彼氏が居る時期に悔しくて堪らんからジム行ってん、辞めても習慣になってね、事務所の庭とかで鍛えたりしててんな…人に見せるもんとちゃうけどね、ここまでしたらちょっと自慢やろ」

 高石はモストマスキュラーのポーズをとって腕と胸をアピールし、ついに美月から

「触ってもいい?」

の言葉を引き出すことに成功する。
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