上 下
25 / 96
11月

24

しおりを挟む

「……」

 パートナー同士の異様な席をチラと見た美月は、それなりのボリュームの飯を食らいながら潤へ尋ねる。

「…ジュンちゃん、旦那さんさ、うちのタカちゃんと意気投合してる。共通の話題でもあったのかな?」

「本当だ、うちの人社交的だし、副業とかいろいろしてたから、どこかで会ってたのかもね」

「へぇ~、タカちゃんも社交的だけど…良かった、仲良くしてくれて」

「そうだねー…」

飛鳥と話す高石の態度を遠目にだが見て、潤はピンと感じるものがあった。

「んー、ミツキちゃん、高石さんってさ、ミツキちゃんに意地悪したりする?それとも付き従う感じ?」

つまりはSかMかを尋ねたかった潤だが、言葉を選べば不自然な聞き方になってしまった。

「なにそれ?タカちゃんはMよ、マッサージ?とか風俗とか行ってたんだって。今は行ってないみたいだけど」

「あー…、そう…」

ならばきっとあの店の馴染みの客だったのでは?

 潤は美月にはとてもじゃないがそんな事は言えず、唇を噛み込んで目を泳がせる。

「行ってみようか」

 潤の思案など知る由もない美月は高石の交友関係が広がった事を素直に喜び、共にテーブルを移動した。


「ねぇ、タカちゃんとアスカさんは面識があったの?さっきから仲が良さそうだけど」

「んンっ…!ぶぼっ」

美月からの質問に高石はせて、お洒落パスタを吹いてしまった。

「やだ、タカちゃん…もぉ…」

「と、トイレ行ってくるわ…」


 飛んだペンネを拾い、口周りを押さえて退却する高石の後ろ姿を見つめる美月へ、同じパスタを咀嚼そしゃくしていた飛鳥がようやく口を開く。

「あのね、彼…ボクが働いてた店の常連だったんだよ。偶然ね」

「ちょ、アスカ…⁉︎」

美月の前でニューハーフSMクラブの話など…突然の危うい展開に、自身もボンデージ体験済みの潤が慌てて止めに入ろうとした。

 そんな妻を目線で制して、

「ボク、揉みほぐしの仕事もしててね、高石くんもよく来てたんだよ。大きいし特徴あるから覚えてたんだ」

と自然な嘘で飛鳥は美月を納得させる。

「そっかぁ、たまに腰とか肩とか痛いって言ってるもの…でも、そんなに仲良くなるもの?」

「うん、ボクは基本的におしゃべりしながらほぐしてたから…ミツキちゃんの事も話には聞いてたよ?ふふ♡」

「へ、ぇ……なんて…?タカちゃん…?」

「顔はキツめだけど可愛い♡って。早く付き合いたいなぁ~ってね、ふふ」

 もはやどこまでが嘘なのか、しかしトイレから戻ってきた高石に美月はニンマリと甘く笑いかけ、ここ一番の美しさを見せた。

「うん?ミーちゃんなに…」

「高石くんはボクのお客さんだった、って話をしたんだよ♡」

「エ」

飛鳥の言葉に高石は顔色を失い、公衆の面前で話せるラインでの弁明を必死に紡いで口からり出す。

「えっ、ちゃう、ちゃうねん…ミーちゃん、あの、趣味、遊びやねん、浮気とかやなくてな、あのー…手、手ぇだけやねん、裸にはなったけど…い、一線は越えてへんし、第一、男やからノーカ」

「タカちゃん何言ってんの?揉みほぐしの担当してもらってたんでしょ?今でも行ってるもんね、それにしてもそれがパソコン教室の先生もしててジュンちゃんの旦那さんになるなんて…世間って狭いわね」

「は…あー、うん、うん…マッサージのね…うん…上手いから…うん…」

口元を引きつらせた高石は目玉だけビー玉のようにコロコロ動かして飛鳥を確認し、腹を抱えて笑うその姿を捉えると歯を食いしばって目を閉じた。

「どこまでも…刺激をくらはるわ…」

「あはは、面白いわー♡いつでも言えよ、揉んでやっから♡」

「どこをですか…」


 偶然の再会を果たしたこの2人は、今後も家族ぐるみで交流をしていくのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

優しい先輩に溺愛されるはずがめちゃくちゃにされた話

片茹で卵
恋愛
R18台詞習作。 片想いしている先輩に溺愛されるおまじないを使ったところなぜか押し倒される話。淡々S攻。短編です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜

船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】 お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。 表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。 【ストーリー】 見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。 会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。 手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。 親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。 いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる…… 托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。 ◆登場人物 ・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン ・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員 ・ 八幡栞  (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女 ・ 藤沢茂  (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される

Lynx🐈‍⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。 律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。 ✱♡はHシーンです。 ✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。 ✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。

処理中です...