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11月
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しおりを挟む「……」
パートナー同士の異様な席をチラと見た美月は、それなりのボリュームの飯を食らいながら潤へ尋ねる。
「…ジュンちゃん、旦那さんさ、うちのタカちゃんと意気投合してる。共通の話題でもあったのかな?」
「本当だ、うちの人社交的だし、副業とかいろいろしてたから、どこかで会ってたのかもね」
「へぇ~、タカちゃんも社交的だけど…良かった、仲良くしてくれて」
「そうだねー…」
飛鳥と話す高石の態度を遠目にだが見て、潤はピンと感じるものがあった。
「んー、ミツキちゃん、高石さんってさ、ミツキちゃんに意地悪したりする?それとも付き従う感じ?」
つまりはSかMかを尋ねたかった潤だが、言葉を選べば不自然な聞き方になってしまった。
「なにそれ?タカちゃんはMよ、マッサージ?とか風俗とか行ってたんだって。今は行ってないみたいだけど」
「あー…、そう…」
ならばきっとあの店の馴染みの客だったのでは?
潤は美月にはとてもじゃないがそんな事は言えず、唇を噛み込んで目を泳がせる。
「行ってみようか」
潤の思案など知る由もない美月は高石の交友関係が広がった事を素直に喜び、共にテーブルを移動した。
「ねぇ、タカちゃんとアスカさんは面識があったの?さっきから仲が良さそうだけど」
「んンっ…!ぶぼっ」
美月からの質問に高石は咽せて、お洒落パスタを吹いてしまった。
「やだ、タカちゃん…もぉ…」
「と、トイレ行ってくるわ…」
飛んだペンネを拾い、口周りを押さえて退却する高石の後ろ姿を見つめる美月へ、同じパスタを咀嚼していた飛鳥がようやく口を開く。
「あのね、彼…ボクが働いてた店の常連だったんだよ。偶然ね」
「ちょ、アスカ…⁉︎」
美月の前でニューハーフSMクラブの話など…突然の危うい展開に、自身もボンデージ体験済みの潤が慌てて止めに入ろうとした。
そんな妻を目線で制して、
「ボク、揉みほぐしの仕事もしててね、高石くんもよく来てたんだよ。大きいし特徴あるから覚えてたんだ」
と自然な嘘で飛鳥は美月を納得させる。
「そっかぁ、たまに腰とか肩とか痛いって言ってるもの…でも、そんなに仲良くなるもの?」
「うん、ボクは基本的におしゃべりしながら解してたから…ミツキちゃんの事も話には聞いてたよ?ふふ♡」
「へ、ぇ……なんて…?タカちゃん…?」
「顔はキツめだけど可愛い♡って。早く付き合いたいなぁ~ってね、ふふ」
もはやどこまでが嘘なのか、しかしトイレから戻ってきた高石に美月はニンマリと甘く笑いかけ、ここ一番の美しさを見せた。
「うん?ミーちゃんなに…」
「高石くんはボクのお客さんだった、って話をしたんだよ♡」
「エ」
飛鳥の言葉に高石は顔色を失い、公衆の面前で話せるラインでの弁明を必死に紡いで口から放り出す。
「えっ、ちゃう、ちゃうねん…ミーちゃん、あの、趣味、遊びやねん、浮気とかやなくてな、あのー…手、手ぇだけやねん、裸にはなったけど…い、一線は越えてへんし、第一、男やからノーカ」
「タカちゃん何言ってんの?揉みほぐしの担当してもらってたんでしょ?今でも行ってるもんね、それにしてもそれがパソコン教室の先生もしててジュンちゃんの旦那さんになるなんて…世間って狭いわね」
「は…あー、うん、うん…マッサージのね…うん…上手いから…うん…」
口元を引きつらせた高石は目玉だけビー玉のようにコロコロ動かして飛鳥を確認し、腹を抱えて笑うその姿を捉えると歯を食いしばって目を閉じた。
「どこまでも…刺激をくらはるわ…」
「あはは、面白いわー♡いつでも言えよ、揉んでやっから♡」
「どこをですか…」
偶然の再会を果たしたこの2人は、今後も家族ぐるみで交流をしていくのであった。
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