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10月

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 高石が上がったら入れ違いに部屋着を着た美月が風呂場へ入る。

 上はファスナーの付いたもこもこのパーカー・下は先週と違い暖かそうな長ズボン。

 共に触り心地が良さそうだが手を出さずに寝なければならない、高石はベランダへ出て覚悟の煙草に火をつけた。
 

 10分、20分…嫌に長く感じてリビングに入ると、美月はちょうどトイレから出てくるところだった。

 高石と目が合うと彼女は慌ててそっぽを向き、戸棚から栄養ドリンクを取ってぐびぐびと喉へ流す。

「なに、ミーちゃん…具合悪い?冷えたんかな」

怒ったか体調を崩したか、高石が気にして近付くと美月は顔を真っ赤にして後退あとずさりし、冷蔵庫に濡れた頭をぶつけた。

「いっ…たぁ…ぃ……もー…」

「逃げるからやん…なによ、襲わへんよ?」

「き、」

涙目の美月はその口のまま静止し、目線をチラチラと逃がす。

「き?……なんやろ、教えてぇな、ミーちゃん」

なんだかもう少し責めてみたい、高石は冷蔵庫を背にした彼女を手で囲って尋問を始める。

「なんよ、言うて、腹痛い?」

「ちがう、あの…さっき…」

「うん?」

「き、きす…」

「チューして欲しいの?ええよ、」

「ちがうぅ、キッ…キスマーク…付けたでしょ…胸…に!」

「うん、付けたよ」

真っ赤な美月のその唇までもう少しだったのに、なんだそんなこと、と高石は悪気無く答える。

「もっと付けよか?首でも腹でもええよ」

「嫌よ…もう…すぐ消えるかしら…恥ずかしい」

 服の上からソコを押さえる美月の手がいやらしい、高石はもはや誘っている様にしか見えずため息を吐く。

 そしてかねてより計画していたことを提案した。

「ミーちゃん、恥ずかしついでにさ、一緒にゴム選ばへん?」

「は?」

ミツキは下まぶたをヒクつかせて、らしくない不細工な表情で高石を睨む。

「ゴム、スキン、コンドーム」

「聞こえてるわよ…選ぶって…自分でやってよ…わかんないもの」


 美月はキッチンからリビングへ逃げるも、高石はすぐに追いかけ後ろから捕まえた。

「お姉さん、自分の体に関わる事やから、一緒に考えような、」

「えぇ…」

 高石はがっしりと困惑する美月の肩を抱き、連結した電車のように思う方向へ彼女の脚を操縦する。

「ミーちゃん、俺のスマホ使って、ほい…」

 そのままずるずると美月をソファーまで連れ込み、バックハグのまま座らせる。

 そして目の前に自身のスマートフォンを掲げて、ショッピングアプリの検索欄をタップした。

「はい、ここ、入力して…」

「な、なんて?」

「ナニ探すんやったっけ?」

「あ……」


 美月は震える指で『コンドーム』とキーボードを叩くと、ジャンルも絞っていないので該当商品が何千件とヒットした。

「そんだけやとヒットが多いなぁ…限定せな、な」

「ば、馬鹿じゃないの…」

口を尖らせながら、美月は更に『大きいサイズ』と付け加えた。

 さっきから既に彼女の腰には硬いモノが当たっている。

 コレと他者の物とを比較したことは無いが、自身の手の平との対比は何となく覚えている。

「んー、それでも多いなぁ…あ、サイズ測ろか?」

「は」

「買うの久々やから、サイズ変わってるかも分からんよ。ミーちゃん、そこ、俺の荷物の吊りポケットにメジャーあるから。それで測ったらええわ」

「タカちゃん…仕事道具は流石にダメよ…」

「冗談よ。タコ糸かなんか…紐ある?」


 美月は高石の手のおりから出てキッチンの引き出しを開け、菓子の包みに巻かれていた水色のリボンを取り上げる。

「あと物差しとマジック…なんか印が付けれるもん」

「んー、」


 広い室内を行ったり来たり、美月は家の各所から材料を集めてまた自ら素直に高石の腕に収監された。

「ミーちゃんはおもろいなぁ……ん?見てくれへんの?」

「ちょっと無理よ…」

「触ったのに?」

「服の上からでしょ!あたし、あの日は何かネジが飛んでたの………早く測って…」


 背中越しに美月の伏したまつ毛が振れる、高石は道具を受け取ってからズボンの腰に手を掛けた。
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