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10月

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「ミーちゃん、吐きそうやないか?大丈夫か?」

「ん、大丈夫…ハイボールは…酔うなぁ、ん、」

 行き先は美月のマンション、地を這うこの車では揺れも相当なものだが、今日も無事に吐き戻さずに送って来れた。

「着いたよー、ミーちゃん…起きや」

高石は目を閉じてシートに寝転ぶ美月の頬をてのひらで押し叩き、その感触を少し楽しむ。

「起きひんなら…せやな…チューしよか、」

「………」

 応答無し、していいということなので身を屈め、助手席の美月の上へ半身覆い被さってその唇を奪う。

 眠り姫を起こす軽いキス、ではなく高石はいきなりフルスロットルの深いキスをお見舞いした。

「ンっ…んー!ちょ、たク、ん、んん~♡」

「は…なんや、起きたんか」

「起きてた!最初から…ん♡んぅ~…」

 予告した時になんとなくまぶたが動いた気がしたし、どちらにしてもそろそろ報酬を頂ける働きはしただろう。

 分厚い唇で美月の口をこじ開け舌と歯を舐めてやると、薄くウイスキーの余韻がまだそこに残っていた。

「まだするか?ミーちゃん、起きる?」

「っ起き、る…起きた!」

「肩が出てんなぁ…無防備やわ…体、冷やしなや」

高石は太い指でつつつ…と丸い肩のラインをなぞる。

「隠す、隠す、もう…やだ…」

 悩ましげな声を漏らしながらもしっかりと覚醒したので、高石は外から助手席側に回って彼女を引っ張り上げた。

 平面駐車場にまばらに立てられたライトに照らされた二人、美月は再び逞しい腕に身体を預けてよたよたと部屋を目指す。



「もうちょいやで…」

 美月が高いヒールを履いても充分に釣り合う大柄な高石、上から見下ろせばニットの胸元につい目がいってしまう。

「タカちゃん…見過ぎ」

「ほな隠せて…自然に目が行ってまうのよ…」


 美月は鍵を開けて玄関へ入ると、ペタンと上がりへ腰掛けてロングブーツのファスナーへ手を掛けた。

「ん…」

「手伝おか…よいしょ……こんな高いのよぉ履いてんな、ミーちゃん…脚痛いやろ」

「慣れれば平気…ふふ、カカトで踏んであげようか?」

「いや…ミーちゃんにそういう激しいのは求めてへん…いや、魅力的やけどな…」

8センチの高さのピンヒール、これで踏まれれば物理的にもなかなかの刺激だろう。

 膝までのブーツにインしたのは濃いインディゴのスキニージーンズ、ファスナーを開いたブーツを抜くと下からはピンクの花柄の靴下が出てきた。

「なに、毛色のちゃう靴下…」

「かわいいでしょ?」

「そら可愛いよ」

 高石は美月を褒める讃えることに関しては一切の照れがない。

 そして褒められ慣れている美月もその賛辞を素直に受け取る。

「ふふ♡タカちゃんは何でも褒めてくれるのね」

「可愛いからね…顔とかちゃうよ、全体的によ」

「うれしい」

 肩を抱いて美月を持ち上げ立たせると、高石はそのまま少し小さくなった彼女のその腰に手を回してリビングまで歩く。

 1週間前に二人で並んで寝たリビング、そのソファーに腰掛けたらもう一度キスをして、揃って一息ついた。
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