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9月・高嶺の花は摘まれたい

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「はい、乾杯。10人斬りおめでとう。今回はどんな男なのかね?」

車で数分の行きつけの焼肉屋で、ひとまず烏龍茶で二人はグラスを交わした。

「斬ってないし…、合コンで会った駅前の服屋のお兄さん…」

「何ヶ月?」

「いっしゅうかん…」

1週間、これは今までの最短記録かもしれない。

「……何がアカンかったんやろな?」

「わかんない…お泊り断ったから?」

「1週間で迫られたんかいな。それは別れて正解よ」

「はぁー…そう?合ってた?」

「合うてるよ。大人やから色々やけど、ミーちゃんが堅実な付き合いを望んでんねんから。がっつく男はアカンよ」

出会ってから今まで、美月が男にフラれる度にこうして高石が慰める会を開いてきた。

 しかしながら惚れた女が他所の男に消費されて棄てられるのを見るのは毎回辛いものだ。

「棚卸し前に告白されて、昨日でおしまい、早かった!」

「んー、毎回言うてるけどさ、告白されてもちょっと考えてさ、見極める期間を設けたらどうなのよ。今回の男は明らかに体目当てやろ。分からんかったかな」

「…ちょっと色気があって、カッコ良かったの…」

「お金貸して逃げられたこともあったやんな」

「ハイ」

「とりあえず今回は、気持ちが傷付いただけで済んだんやから、それで良しとしようや。明日休みやんな、帰り運転したげるから呑みなさいよ」

「ありがとぉー………ゔー…ハイボールで」


 しかしここまで連敗が続くなら傾向と対策を練らなければならない、もう遅すぎるくらいだが。

「ミーちゃんはさ、男たちにどう思われてて、どう差異があって振られたんかな?どういう女性像を求められてたと思う?」

「すんごいエロいと思われてる」

「うん、そういうとこやないかな…」

 その後聞き出した過去の男のエピソードから総合するに、S女を屈服させたいドS男か、S女にしいたげられたいドM男、そんな男にしか告白されてないらしい。

「どっちかの需要にはマッチしそうじゃない?おかしくない?」

「ミーちゃんは見た目の割に淑女やからね、S男からしたら物足らんのよ。『ワガママな女を征服したい』わけやから。んで、M男からしたら『ワガママな女に征服されたい』わけや。見た目通りワガママに生きてみればええんちゃう?」

 美月は元々育ちの良いお嬢様らしい。

 所作が美しいのは勿論だが、こうして食事をしていても相手のグラスに気を回したり空の皿を下げたりと甲斐甲斐かいがいしい。

 交際期間中は職場以外の男性がいる飲み会には出ないし、相手にみさおを立てるまさに淑女なのだ。

 それ故か、美月はこんな場でも元彼の愚痴らしい愚痴を言えないので、高石が代わりにこき下ろすことで気を晴らしている。

「えぇ…顔の作りはしょうがないじゃない…気が強いのに付き合ってみると淑女って超いい女じゃない?そういうギャップが良いんじゃないの?」

「まぁまぁ…車もいかついし、強い女のイメージを求められてんやね。俺はそのギャップ好きやけどねぇ」

「前の前の男は車目当てだったね」

「あぁ、車でヤらせろ言うてきた奴な、クズやったな」


 それにしてもいい思い出のない男の話ばかり、しかし酒が回ってきて彼女の表情が少し柔らかくなる。
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