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12月・おまけ
おとまり
しおりを挟む12月末。
社宅を引き払った同僚・笠置唯を期間限定居候させている美月は、年越しの2人きりの女子会で旅行の結果を報告させられていた。
「んで?そろそろ言えや、減るもんじゃなし」
寝室の床に布団を敷いてやったのに、唯はずかずかと美月のベッドへ上がり羽毛布団へ潜り込む。
「もぉ…親しき仲でも…あたしだけの話じゃないんだから…」
「えー?どんな具合やったかどうかだけでも教えてや」
親友と言えども下品な猥談はしたことがない。
少なくとも聞く専門だった美月は
「具合も何も…」
と口籠った。
その時点で唯には「ははぁ、してへんな」と容易に察しがついた訳だが、聡い彼女は黙って美月の瞳をじぃと見つめて聞く姿勢を取ってみる。
そうすれば予想通り、美月は
「……そ…い、言ってなかったんだけど……あ、あたしっ…し、処女なの、よ、」
と簡単に初めての告白をした。
というのも、恋愛話は山ほどしたし仲間内で耳にしてきたがぼちぼち頃合い、唯に指示を仰いでもいいかと思えるほどには彼女は弱っているのだ。
しかし当の唯は
「…うん、知ってるよ」
と美月の決死の告白もあっけらかんといなした。
なので
「なんでよっ⁉︎言ってないわよ?」
と美月はがばと起き上がり口をぱくばくと震わせる。
「いや、分かるやん…合コン行って彼氏作りまくってんのに色っぽい話題も出てけぇへんし…まぁうち、童貞とか見分けんの得意やから…なんで教えてくれへんのよ?」
「……いやぁだ……ユイちゃんは…慣れてるんでしょう?馬鹿にされると思って言えなかったのよ」
岩場に腰掛ける人魚姫の如く横坐りの美月はしっとりと手を両頬に当てて隠し、心底恥ずかしそうに口を結んだ。
彼女が恥じているのはいまだ生娘ということ自体ではない。
隠していたのに見透かされていたこと、そしてそれに気付かず手練れのように振る舞っていた己の滑稽さに対してなのである。
「んなことせぇへんよ…経験人数多かってもええ事無いしな…旅行でチャレンジはしてん?」
「…うん…いや、本当……恐かったのよ…覚悟してたんだけど…その…い、痛いじゃない?叫んじゃって……そしたらフロントから内線来ちゃって…」
「ぷはっ!なんやそれ、丸聞こえなんか?」
「引き戸タイプの古い旅館だったから…隣の部屋に響いたみたいでね、その…『大丈夫ですか』って…タカちゃんが『ツレが寝ぼけて叫びましてん~』って誤魔化して…恥ずかしかったわ、翌朝の食堂でのご飯が恥ずかしかったわ…平日だし数えるくらいしかお客さんいないんだもの…」
光景を想像して唯はニヤニヤと笑い、悩める美月の膝へ顔と腕を乗せてさわさわと指先で内腿をなぞった。
「はぁ、じゃあヤらず仕舞いか…彼氏もしんどいな」
「可哀想だとは思ってるわよ…でも衝動的に声が出ちゃったんだもん」
「ふーん……まぁ焦らんでええやん…大切にしてもうてさ、うん…」
「ユイちゃんは…初めての時、どうだった?」
「へ?うち?」
「誰しも初めてはあるものでしょう?…恐くなかった?」
美月は唯の髪をひと束摘んでくるくると指に巻き付ける。
恋人と同じ仕草をされたものだから唯は様々な思い出が甦り、しかしそれらを振り払うように一度目を閉じてからゆっくりと開く。
「んーー……好奇心で臨んだからな…確かに痛かったけど…忘れてもうたよ?その時の相手の顔も忘れたし」
「その辺りの捉え方がそもそも違うのよ…チカちゃんも言ってたけど…『ミツキちゃんはセックスを崇めすぎ』って…崇高とまでは言わないけど、なんて言うか…神聖な…ものじゃない?」
「ミツキってクリスチャンやったっけ?」
「仏教徒よ!もう…その、尊いものでしょ?って、」
「性欲の捌け口やで。愛なんか無くても抱けるし受け入れられるよ。そこそこの意思がありゃそれなりの快感が得られるしな、そこに気持ちが乗れば更に、ってとこやろうけど…一瞬よ」
唯はそう言って美月の膝から頭を下ろし、花柄カバーの低反発枕へあどけない素顔を埋めた。
照明をリモコンで切って掛け布団を直し、
「…汚いのは嫌なの、美しい行為がしたいの」
と美月は枕があった場所へ頭を下ろす。
「耽美派小説みたいやな、ポエミーな」
「馬鹿にしてるじゃない」
「してへんよ、ミツキのペースでスるしかないんやから…頑張りとしか言われへん……な、おやすみ」
「うん…おやすみ…」
枕を分捕った唯はふふと笑い、しかしタガが外れた唯は横を向いて
「…ねぇ、男の人のアソコって、どれくらいがスタンダードなの?……あのね、タカちゃん…こんな…こんななの、長さこれくらいで…」
と暗がりで卑猥なジェスチャーを始めた。
「ほー、デカチンやなー(全部言うてもうてるわ…)」
「こわいのよ…ゔー」
「どこまで触らせてんの?」
これはまた達成した暁には体験談を聞かせてもらおう。
唯は控えめにしかし巧みに誘導して、高石・美月カップルの軌跡を辿るのだった。
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