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1月
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しおりを挟む「かぃらしいな、」
「本当…ジュンちゃんそっくり…可愛いわ♡」
本日、高石は美月に連れられて清里家を訪ねていた。
「髪質はボクかもしれない、ね?」
「そうだね、ふふっ…」
出産という戦いを経て無事帰還した妻・潤は家着のままでソファーに座り、夫・飛鳥が生後ひと月足らずの長女を抱いて客へ見せびらかす。
「頑張ったわね、ジュンちゃん…痛かった?」
「痛かったよ…途中で『もう辞めるー』って叫んじゃった」
「ひえ…」
美月は潤の隣へ座り、まだ見ぬ生みの苦しみとそれどころか貫通さえ耐えられなかった自身の不甲斐なさに不安を覚えた。
潤はチラとその顔色を見ては、飛鳥が淹れてくれたカフェインレスコーヒーと美月が持参した低糖質のケーキを嬉しそうに味わう。
「あたし…大丈夫かしら…いや、予定はまだ無いけど…」
「その時になったら耐えられるって…怖かったけど、主人も立ち会ってくれたし…なんとか、ね」
「そう…度胸が無いとダメね…」
赤子の大きさに比べれば高石のモノなど…そうは分かっているが美月の心が追い付いていかない。
「抱っこする?」
「い、いいわ、小さすぎて…恐れ多いわ…それにほら、アスカさんに抱かれてうとうとしてるもの…泣いちゃうと可哀想だから、」
儚くて、折れそうで、とてもその生命を軽はずみに抱くことができない…美月はせっかくのお誘いも断った。
一方で、小さな手を恐る恐るつつき、高石は慈悲深げな表情で「ほう」とため息をつく。
「ちぃこいな…アスカさんが父親か…感慨深い…」
「こんなんでも人の親…お前も頑張れよ」
「うちはまだかかりますわぁ」
小声で高石がそうぼやけば、本人がいる手前飛鳥は眉をしかめるだけでお叱りとした。
「ん…寝そうだね…」
「アスカ待って、食べ切っちゃう……うん、ご馳走様。ミツキちゃん、高石さん、ありがとうございました、」
そのままアスカの腕の中で娘は眠ってしまったため、潤が抱き直して寝室へと下がって行く。
「寝つきのいい子なのね…よし……それじゃ、早いけどそろそろお暇しましょ…アスカさん、お邪魔しました」
潤を見送り、美月はコートとバッグを拾って玄関へ足を向けた。
「いいえ、お祝いありがとうね、また顔見に来てあげてよ」
「是非に♡…さて…タカちゃんは揉んでもらうんだっけ?あたし、すぐそこの本屋で時間潰してるわね、」
「は?」
挨拶をしたのにソファーに座り込んだ高石を振り返り、飛鳥は静かに舌打ちをして彼を睨んだ。
「うん、ゆっくりして来や」
「じゃあね、アスカさん…失礼しまーす」
「あ、どーも…」
またもや美月の手前派手に怒れず、飛鳥はパタンと玄関の扉が閉まるまで表向きはにこやかに努める。
そしてリビングに戻れば、高石はソファーにうつ伏せに寝そべって揉んでもらう準備を済ませていた。
「アスカさん、ミーちゃん帰りましたわ」
「お前も帰れよ」
「いや、ちょい相談あってね?背中揉んでもらいながら聞いてもらおかと思って」
前回ここを訪れた時のマッサージが実に体に合っていたため、高石は今日の訪問で施術を受けることは前もって決めていたのだ。
「赤ん坊こいる家庭に長々と居座るんじゃねぇよ、非常識だな」
「んー、ミーちゃんの事なんやけど、」
「聞けよこの坊主!」
寝室の母娘にも配慮し、飛鳥は小声で罵りゴツい尻を蹴った。
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