高嶺の花は摘まれたい

茜琉ぴーたん

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11月

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 一方高石は早々とトイレを済ませ、一服しながら千早の動向を追っていた。

 先日美月がGPS追跡アプリをダウンロードさせたので、高石も共有して確認が出来るのである。


「これは…スーパーやな?買い物か…やるやんか」

 千早と知佳の位置は地元のスーパーを指しており、明石焼きの買い出しを2人でしている事が窺えた。

 このままもう少し時間を稼いで、千早も自分もお互いふたりきりの時間を楽しめればそれがベスト…高石は美月よりも少し多くの事を考えながら灰皿へ煙草を押し付ける。


 最終的には地元で解散だから美月の家に泊まるか、だとしたらどこまでシていいのか。

 彼女はきっと想定していないだろうから、いつも通りキスまでか…今夜も乳首を虐めてもらうか。

 ぐるぐる想像を巡らせていると、美月が近づいて来た。

「お待たせ、何か飲む?」

「せやね、眠気覚ましになるようなん飲んどき、」

「うん、コーヒーにしようっと」

美月は自販機に小銭を入れ、ミルクも砂糖もボタンでMAXに調整して、カフェオレを選択した。

「覚めへんやん…可愛いな」

「え?苦いの無理よう」

「ギャップやなぁ、…ミーちゃん、今日の格好も可愛いわ」

 萌え袖のゆるいニットにスリットの入ったデニムのロングスカート、動きやすいように足元はスニーカーだがベロア調でカジュアル過ぎないよう合わせてある。

「ありがとう、運転するし、歩けるようにね」

美月はそう言って靴先をちょんと地面に打つ、その仕草もまた高石の口元をほころばせた。

「ペアルックはどうなってん?」

「え、デニムの色が一緒でしょ♡」

「はぁ、そういうことか……可愛い。他の男には見せたないわ、ほんまに」

「褒め過ぎよぅ、もー…♡」


 高石もコーヒーを買い、表のベンチへ並んで座って景色を眺める。

「千早さんたち、何か連絡来た?」

 この様子だと、美月はトイレでGPSを確認していないらしい。

 元々スマートフォンに固執しないタイプの彼女の性分に千早は延命させられたようだ。

「いや、集中して走ってんねんやろ、何も来てへんな…」

「そう…」

集中するのは運転席の千早だけだろうに、しかし美月は突っ込まずに熱々のカフェオレへ口を付けた。

「熱…あ、GPS見てみる?…」

 カフェオレをベンチへ置き、バッグからスマートフォンを取り出そうとする美月の手をガシと掴んで、高石が少し顔を近付けて囁く。

「ミーちゃん、千早の名前ばっかり言わんとって、妬くやないか」

「えっ………あ、」

 美月は簡単に頬を染め、彼女のスマートフォンはバッグから出てくることはなかった。


 ベンチへ寄り添って座り、高石の方へちょんと美月が頭を乗せる。

 掴まれた手はそのまま握り直して二人の間に収まっていた。

「あー、幸せやなぁ、こんなべっぴんさん連れて…ふふ」

「それって…あたしが美人じゃなかったらどうなのよ?」

美月はもはや、「自分が美人である」ということに謙遜などしない潔さを持っている。

「せやなぁ、まず…俺らの出会いは顔に左右された訳やないけど…そっからの展開が変わってたかも分からんね」

 美月が販売した商品の交換に高石が名乗りを上げた。

 それが最初の接点だったのだが、彼のこの行動は慈善ではなく打算でもあった。

 「どえらい美人、お近付きになりたい」がそもそもの動機だったのである。


「しかもミーちゃんは仕事中は身内にはツンケンしてるしなぁ、お客さんにはめちゃくちゃ丁寧やけども」

「顔が好みじゃなくて、性格もそんなだったら……確かに仲良くはなってないかぁ、」

「たぶんね、はは。んなこと言い出したらキリが無いけどなぁ、俺以外の奴が代わりに出てくれてたらソイツと付き合うてたかもよ?」

「そうか……必然じゃないのよね、」

「結果オーライよ、ミーちゃん、」

高石はその偶然の出会いに感謝し、隣の美月へ歯を見せて笑った。
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