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9月・高嶺の花は摘まれたい

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「タカちゃん…ごめん…」

「ええよ。酔ってたってことで。抱っこした時に嫌がってくれたら、ここまではせんかったけどね」

ベッドへ布団を置き高石もベッドへ腰掛けると、美月が恐る恐る口を開く。

「あの…あたし、し、し処女だって…言ったことあったっけ?」

「……ここに来る車内で聞いた。あれ、やっぱり寝言やったんやな」

 どうせそんなことだろう、高石は寝言を要約して教えてやると、美月は手で顔を覆って横にパタンと倒れてしまう。

「あわゎゎゎ…あたし、酔って他所よそでも同じ事してたらどうしよ…お嫁に行けない…」

「…しやから誘い受けやめや。俺が貰うって言わせたいんか」

「言葉のアヤでしょ!…でも止めちゃったじゃない……あたしじゃ、だ…抱く気になんない…?」

起き上がった美月は、直球を投げた。

「は?全然イケるよ。なんか今日は距離感が近かったし、その気あんのかとは思てたよ。どっちにしてもする気は無かったけど」

「え……なんで?」

「こっちにも…諸事情あってね」

「?………そっか…」

「…この話は終いや、寝よか」

 これ以上報われない興奮をしたくない高石は話を切り上げる。


 それなのに

「タカちゃん」

と彼女が袖をぎゅうと握ってくるから、ゆっくりと息を吐いて雑念を払った。

「…しやから、俺を舐めてんのか。3年も我慢してんねんぞ。妥協で選ばれても嬉しないねん。セフレになりたいわけちゃうし。いや、嬉しいけど」

「…妥協じゃない。さっき抱っこされた時、すごいドキドキした。タカちゃんがいい。『ぜん食わぬは男の恥』って言うじゃない」

 高石は頭をガリガリと掻いて、呆れた顔でため息を吐く。

「俺の恥で済むんならそれでええよ……要らん言葉ばっか覚えよって…悪い女やな…」

「お願い、付き合わなくてもいいから…抱いてほしいの…」

「は」

 まさかの求められ方に高石は驚愕し、愕然としながらも温もっていた体が再びふつふつと熱を帯びてくる。

「……馬鹿にすんなて…ちゅーはしたことあんのか?」

 据え膳、それも向こうから乞うてくる極上の逸品、高石の問いかけに美月は黙って頷いた。

「ほうか、」

高石は彼女の方へ向き直って、抱き締めるところから始める。
 

 そして思う…過去の男共よ、勿体無いことをしたな。

 こんなに気高くて可愛い子は他に居ないのに。

 お前らに礼を言うとすれば、この子がれない内に手放してくれてありがとう、やな、と。


 美月が高石の頬に手を当てる。

 酔って顔が近くなることはあったがここまでの距離は初めてで、男は先に目を閉じて受け入れる…3年越しのキスの感触は格別だった。


「タカちゃん、唇、分厚いのね」

「そうね」

「ん…」

チュッと可愛らしい音がして、角度を変え、それはスタンプの様に数回繰り返された。

「………ミーちゃん、最後にキスしたんいつや?」

「た…短大の時…」

「…そんな感じやな、お子様やん」

再び唇を合わせると、高石がモゾモゾと動き出す。

「ン……?」

「口開けて」

「ンぁ……!…?…あ」

「べろ出さな、ほらあーん」

「ぁー……ぇふっ…」

ぐちゅぐちゅと湿った音が響き、美月の色っぽい吐息がそれに混じる。

 向きを変えながらむさぼるように口をんで、口からよだれが垂れるなんて子供じゃあるまいし、だが抑えることができない。

「あ、ん、」

思いの外従順な彼女は、あっという間に主導権を奪われているが気付いてはいない。

 そしてキス中に息は止めるのか?鼻息が掛かったら失礼じゃないか?と呼吸を止めてしまった。

「……おい、息しろ!」

「…あ…スゥ…あぁ…ふぁ」

「あほか」

「ごめ…どうしていいかわかんなくて」

「そっからかい。普通に息すりゃええやん」

「食べた物の味とかするでしょ?失礼じゃない?」

「知るか、ミーちゃんが食うたもん知ってるし。にんにくも食うたし、お互い様やろ…俺は栄養ドリンクの味は嫌やないよ」

 高石はハグし直し、時折顔を離して口付けをして、また密着する。

「恥ずい。うゎー」

「今更や」

「ん…タカちゃんはタバコ臭いね」

 そしてずっと美味しそうに見せびらかされていた生脚に手を伸ばし、ゴツゴツした男の指が白い肌を優しく撫でていった。

「大人になってからちゅーしとらんってことか」

「んッ…そうだね。させなかった」

「マジで今日はどういった心境の変化よ。ミーちゃん身持ち堅いのに。ほんまにセフレやったら勘弁よ。いや、嬉しいけど」

「んー…」

図星をついたか、美月は少し黙り込んでから話し始める。


「焦ってたの…セックスに。…いいなと思った人だったけど誘い断ったらすぐ振られちゃったし…」

「俺で練習か?」

高石は鼻で笑って吐き捨てた。
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