胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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6…胸を張る

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「…おーい、シカトやめてー」

「証人は会社の人にでも頼みましょう」

「ねぇってば、おっぱい小さいけど良いのー?」

「印鑑は最後だな」


 諦めて朋也くんの動きを目で追っていると、彼はピタと止まってやっと私と目を合わせた。

「ん、何?」

「…まぁ良いや」

「何が?ねぇ、」

「いいえ…書いてるんで邪魔しないで下さい」

 しつこいって怒られる日がそのうち来るのか。

 そろそろ自重しようか。

 しぶしぶペンを取って記入のシミュレーションに励んでいると、朋也くんが自分の欄を書き終える。

 そして私の手からペンを奪って上からぎゅうと握り、

「もう、美紀さんの胸の小ささは生活の一部なんで、改めて言及する事項じゃないんすよ。そろそろ次のステージに進みませんか」

 と指輪がはまるだろう部分に触れる。

「認めたね」

「気にし過ぎなんすよ。一生言うつもりっすか」

「たぶん言うよ」

「じゃあせめて、夜だけにしてもらえないすかね、美紀さんは自虐のつもりでもジブンにとっては興奮材料なんで」

 朋也くんはそう言って婚姻届を私の方へくるりと回してくれた。

「…分かった」

「他者に誇示するようなことでもないでしょ」

「そうだね…あ、でもさ、ドレスとか着るなら気になっちゃう」

「なら式はやめときますか」

「えー、したい」

「早く書いて下さい」


 いつの間にか私は朋也くんに精神年齢を追い越されている。

 いつまでも胸のことにこだわる駄々っ子な私を彼は「ハイハイ」といなして、でも馬鹿にはせず話は聞いてくれる。

 本当にこんな私で良いのかなぁ、ともあれ面倒なマリッジブルーが始まってしまった。
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