胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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6…胸を張る

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 私はつい興味本位で、

「…すみません、レンタル彼氏さんだったんですか?」

靴を履き終えた彼氏さんに尋ねてしまった。

 彼は

「そうですね。毎度ご利用頂いてます。マイカさん、あの性格だから色んな事務所から出禁食らってるんですよ。支払い渋ったり、延長料値切ったり。顔出しNGの奴の写真をSNSに上げちゃったり。ウチの登録者も、俺以外はみんな拒否しちゃってて…完全シャットアウトしちゃうのも可哀想かってんで、一番ベテランの俺がお情けで付き合ってやってるんですよ」

と内部情報を教えてくれる。

「そうなんですか」

「俺たちはホストじゃないんで、何でもする訳じゃないんですよ。ワガママしてるとそういうことになりますね。俺は条件に合ってるし稼ぎたいんで相手してあげてますけど…朋也さん、でしたっけ?アレとリアルに付き合ってたとか勇者っすね」

「やめろし」

突然勇者扱いされた朋也くんは、同年代に見せる男子らしいリアクションを返した。


「じゃ、次の予約があるんで…お疲れさまでーす!」

レンタル彼氏さんは尖った靴先をトントンと鳴らして、颯爽と衣装部屋を出て行く。

 次はどんな利用者さんに愛想を振り撒くのだろう、少なくとも澤條さんにするよりはマシな態度を見せるのだろうが。

「はい、お疲れさまでしたぁー……朋也くん、勇者だって」

「…帰りましょう」


 背後からは、荒々しい吐息が漏れ聞こえている。

 暴れて関わりになるのも嫌だし、私たちも逃げるように部屋を出た。


 追いかけて来たプランナーさんと少しやり取りをしてパンフレットを貰って、深々と下がる頭を申し訳なく思いながらも式場を去る。

「ここは候補から外しましょうね」

「うん…ちょっと、要らない記憶が呼び覚まされそうで嫌だもんね」

「他の式場もどんどん見ましょう」

「うん」


 電車で自宅まで帰り、道中は疲れのためかお互い言葉数が少なかった。

 地元スーパーで食材を買って夕飯を考え出した頃に、やっと談笑できるくらいに元気が戻った。
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